楽園に別れを
食事が終わり、デザートも平らげ、心が満たされる。
そこに運ばれてきたのは、二人からアンナへのプレゼントだ。
「素材だから、加工は自分で」
「これで男の目をさらうようなアクセサリを作るといい」
アイシャの言葉で、アンナが包みを開けると、そこには、アメジスト、オパール、トパーズ、サファイヤの粗削りの宝石があった。
「うお、こんな高い物・・・」
「否、ありがとう、大事に使わせてもらうよ」
アンナの報酬や、シャアリィ、アイシャの収入を鑑みれば、特別に高いわけじゃない。
しかし、庶民の感覚であれば一月分の家計なのだから、やはり高価なのか。
「少しばかりお姉さんだけど、私はアンナのことお友達だって思ってるよ」
「今まで本当にありがとう」
「こんな立派な杖も作って貰えて・・・」
「今更だけど、初めての日、ぶっぱなしてごめんね?」
「やっぱ、私、ちょっと馬鹿だから、こんな風なの」
シャアリィが感謝を述べると、アイシャも又、アンナに、
「長い滞在になっても、文句ひとつ言わず付き合ってくれて、ありがとう」
「安心して眠れる場所っていうのは、私達にはなかなかなくてね」
「二人が一緒に寝られるだけでも、感謝なんだ」
「それだけじゃなくて、美味しい料理も、人生の先輩としての学びもここにはあった」
「もし、私達が全てを為して、ここに戻ってきたら、また泊めてもらえるかな?」
アンナは大粒の涙を流しながら返事をする。
「こんな楽しい時間を過ごせるなんて、思ってもみなかったよ」
「初めは面倒な奴らが来たなんて思ってたけれど、二人が凄くいい奴で甘えてしまったね」
「家の中もすっかり綺麗になったし、楽しみも増えた」
「でも、本当は・・・寂しいんだ」
「一人の時には感じなかった、チクチクとした痛みが、今、私の中にあるんだよ」
「疲れたら、やり遂げたら、何もかも嫌になったら、何時でも帰っておいで」
「私も頑張るから、きみ達もどうか元気で・・・」
シャアリィがグラスに酒を注ぎ、カチリと三人が合わせる。
「ドラゴン・スレイヤーに」
「偉大な武具職人に」
「根性曲がりだけど優しいあなたに」
それぞれが、思ったことを口にして酒を煽る。
もう、ここで遣り残したことは一つもない。
あるとしたならば、討伐を果たした後の凱旋だけ。
「次に来る時には、旦那さんがいたりしてね?」
と、シャアリィが冗談を言えば、アイシャも乗って、
「娘か息子がいるかも知れないぞ?」
アンナは照れながら、
「何年友達を放って置く気だよ?」
と、突っ込む。
沢山のお遣いと沢山の討伐、沢山の良い思い出。
魔法の聖地、エンダーベルトを離れたならば、次の目的地は東の港。
――― フェザーエリス。




