アンナの誕生日
鼻をくすぐる香ばしい匂いでアンナは目を覚ました。
それは時折、無性に食べたくなるアレの匂い。
「うなぎか!?」
飛び起きたアンナがキッチンで半ば叫ぶように確認すると、
シャアリィも、
「うなぎだ!」
と、今、タレを付けて炙ってる身をアンナに見せる。
その喰い付き具合に、アイシャは声を出して笑う。
「ははは、この匂いを寝起きの空腹に嗅がされては、たまらないよね」
「早く洗面台に言って支度して、主賓はテーブルで大人しくしてるといい」
うなぎを炙っているシャアリィの横で、アイシャは、じゅわじゅわと、大蒜と生姜の利いたフライドチキンを揚げる。
オニオンリングやフライドポテトも。
シャアリィやアンナの大好きな揚げ物尽くし。
大豆ソースに、ごまマヨネーズ、マスタード。
酒もライスも進む、豪華メニューが一品づつ出来上がり、テーブルに運ばれる度、
「味見してもいいか?」
と、アンナが手を伸ばそうとするのを、
「まだだよ!」
と、制するのが、楽しい。
余程楽しみなのか、着替えも疎かなアンナ。
最後の一品のポテトサラダが揃った所で、待ちきれないとばかりに二人に確認を取る。
「これで全部だよね?」
「もう、いいよね?」
アイシャがグラスを並べて、スパークリング・ワインを注ぐ。
冷蔵庫の中に残るのが、ケーキだけになったのを確認し、
「じゃあ、食前のお祈りだ」
と、アイシャが冗談を言うと、
「祈りで腹が膨れるかぁ!」
等と聖職者に怒られそうなことをアンナが口走って、おあずけが解除された。
やはり最初の一口は、うなぎ。
「うーん、最高、とろける」
と、シャアリィがうっとりしている隣で、アンナはライスをかきこむ。
「うなぎってのは、ライスあってこそだよ!」
「タレ残ってるなら、頂戴、ライスにめっちゃ合うんだ」
「騙されたと思ってやってみ?」
アンナは、ライスの上にうなぎを乗せると、その上からタレを掛けた。
アイシャも真似をしてみる。
「化ける!これはうまいぞ!」
さすがは港町の娘、と、訳の分からない褒め言葉がアイシャの口から零れた。
次はフライドチキン。
「おおお、よくもこんなに上手く揚げたな・・・」
「今まで食べたフライドチキンなんて、これに比べたら・・・」
アイシャは、アンナの書斎で旧時代の料理レシピ本を見つけていた。
読むだけで涎が零れそうな品々の中から選んだだけのことはある。
「旧人類おそるべし」
「まぁ、一回滅んでリスタートなんだから、仕方ないんだけどね」
「圧力鍋ってのを魔具で再現できないか、今度、聞いてみるか」
そう言えば・・・と、切り出すシャアリィ。
「アンナ三十才おめでとう!」
言われたアンナは、一言だけぽつり、と。
「もう一度、年の部分を省いて言ってくれないかな?」
少し悲し気なリクエストだった。




