一番難しい課題
五月半ば。
遂にアイシャのレベルが百八十の大台に乗った。
シャアリィはレベル百六十五まで成長した。
夕暮れ、『シードラゴン』で細やかな祝勝会。
特上の紅茶とガトー・ショコラの組み合わせは勝利の味。
いよいよエンダーベルトともお別れだ。
「アンナ・・・私達は、目的を達成した」
アイシャの一言に、アンナは歓喜する。
「そうか!遂にやり通したんだな!」
「すごいじゃないか、で、旅立ちは何時なんだ?」
「すぐにというわけじゃないんだろう?」
シャアリィが申し訳なさそうに、
「二、三日かな・・・」
「アンナにはとても良くしてもらったんだけれど、もう次の目的地も決まってるんだ」
「それに、ここは居心地が良すぎる」
「ここに定住しちゃいそうになるよ」
シャアリィの言葉にアイシャも同意する。
「極上の料理に、良き友、稼げる狩場」
「目的がなかったら、本当に永住しかねないよね」
「ちょっとばかり磯臭いけれど、グリーンノウズより全然平気だし」
アンナの顔色が曇る。
「そうか・・・」
「残念だけれど、引き留めるわけにもいかないね」
シャアリィが、アンナの手を握って明日の予定を提案する。
「アンナ、明日の夜の予定空けておいてね」
「アンナの誕生日のお祝いをしよう!」
「アンナ程上手じゃないけれど、私達だって料理くらい出来るんだから」
「それとも外食のほうがいいかな」
「片付ける手間とかもいらないし、どっちにする?」
アイシャが挙手して言う。
「そりゃあ私達が頑張ったほうがいい」
「せっかくの誕生日だし、酒に酔い潰れても自宅なら、ごろりとなれる」
二人が相談している様子を見て、
「自分の誕生日のお祝いなんて、十年してないや」
「ありがたく楽しみにするよ」
「ああ、もう少し、嬉しい顔は出来ないもんかね」
「こんなことなら、もっと人付き合いしておくべきだったな」
と、アンナが零す。
シャアリィは、
「今からでも遅くないよ?」
「私達みたいな奴が言うのもなんだけど、人生は仕事だけじゃない」
「アンナは綺麗だし、スタイルもいいんだから、恋でもすればいいじゃない?」
「男が嫌いなら、私達みたいな感じでもいいんだし」
アンナは苦笑いしながら、
「恋愛ね・・・そりゃあ、私にとって一番難しい課題だ」
「それがあると毎日がひとりじゃなくなる」
「いい意味でも、悪い意味でも」
「私は悪い意味の過去がこびりついててさ」
「なかなか踏み出せないんだ」
「でも、そのおかげで職人としては、何とか一流と呼ばれるくらいになれた」
「そうだね・・・仕事以外も少し挑戦してみるかな」
アイシャは頷きながら、
「恋愛ってのは、ホント、タイミングだからね」
「出会いの場を増やすだけでも、そういう意味では確率が上がる」
「アンナの得意な効率化と洗練」
「相手を見極める目もアンナなら大丈夫さ」
だといいね、と、アンナは照れ臭そうに笑った。




