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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
335/396

成長と安らぎ

『巨人の骸』の魔石は、金貨千四百五十枚で落札された。

落札者は、やはり北方大教会枢機卿ベネディクト。

まだ成功事例はないものの、各地で名有り討伐が活性化しているとの噂。

成し遂げれば討伐報酬だけでも金貨数百枚、さらに魔石の売却額の半分が手に入り、しかも、歴史に名が刻まれるとあれば、迷宮踏破者に次ぐ栄誉と金銭が手に入る。


しかし、現実はそれ程甘くはない。

尋常な方法では討伐不能と判断されるからの『named』指定。

十や二十のパーティが集まったからといって為し果せるものではないのだ。


その判断を鈍らせているのが、シャアリィとアイシャである。

冒険者歴五年にも満たない少女二人が四つの名有りを討伐したのだから、自分達にも出来るだろう・・・腕に自信のある者なら、誰でもそう思う。

レリットランスやザグレブホーンの冒険者たちならば、シャアリィとアイシャがどれ程規格外の存在なのか知っているだろうが。


しかし、近い将来、誰かが名有りを討伐してもおかしな話ではない。

それに必要な条件はただ一つ、


『死なないこと』


それさえ叶うならば、積み上げた末に成し遂げる者は必ず現れる。


・・・


シャアリィとアイシャは、今日も巨像島の中央で特級ゴーレムを相手にしている。

シャアリィの新しい装備の威力は凄まじく、特級ゴーレムの装甲をランス二発で破壊せしめる。

脚部を破壊し、歩行不能に陥れ、コラプションを見舞うという狩り方も、確立した。

最初は五体も狩れば時間ぎりぎりだったものが、今では倍の数を狩ることが出来る。

それはレベルアップの速度に拍車を掛け、当初五ヶ月と目論んでいたスケジュールを半月程早めるペース。


「金貨二百六十枚だけのことはあるね!」

「出力二倍が冗談じゃなく、本当に手に入るなんて」


シャアリィが螺旋杖をくるくると回しながら成果を誇ると、アイシャは、


「あまりシャアリィに強くなられると、私の立場がないね」

「そういえば、レベルアップで総魔力量も上がったんでしょ?」


まだ試してはいないが、恐らく今のシャアリィならば、三十カウントのキャノンを打っても多少余力が残るだろう。

それは魔力回復剤を飲んだ時に回復する魔力量で推測出来た。


「もう少し頑張れば三十五カウントキャノン撃てる、かも?」


そう言って笑うシャアリィの表情にアイシャは少し胸が高鳴る。

この半年での成長は術式使いとしてだけでなく、一人の女性として洗練されていく様。

まだまだ気を緩めればあどけなさも残る顔。

それでも、シャアリィは出会った頃と比べれば、随分と大人になった。


我慢することを覚え、考えることを学び、他者と共存することも出来るようになった。

ここが狩場でなかったならば、思わず抱き締めているだろう。


アイシャは、少し照れたように顔を背けて、


「よし、今日は記録更新を狙おう!」

「今までの最高は十一だから、十二体狩れたら一日早く帰ろうか」

「螺旋杖のおかげで、随分、時間的に余裕も出来たからね」


自分にも言い聞かせる。

無理をすることはない、と。

あの時、フローズン・ドラゴンとの対決を避け、こうして南を回っているのも、無理をしない為。

グリーンノウズでは、その思惑が外れ、大変な目に遭ったが。

しかし、次の目的地、イルオールドでは、その無理をしなければならない。

亜竜を専門に狩るなど、常人には無謀とも言える狩り。


せめて、それまでは、心休まる日々であってほしい。

アイシャはそう思っていた。


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