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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
332/401

冒険再開

年末年始の十日間、たっぷりと休養出来た三人は、今日から各々の仕事に復帰する。

とは言え、夜型のアンナは、シャアリィとアイシャを見送った後、ベッドに潜り込んだ。


「相変わらずだな」

「相変わらずだね」


邸宅の扉を閉めて、合鍵で施錠する。

現状アイシャのレベルは百五十九。

エンダーベルトでのレベル上げは、百七十にするか、百八十にするか、悩む所だ。

恐らく、この場所よりも二人のレベル上げに適した場所はないだろう。


それを考えれば、滞在期間を延長して、あと五ヶ月。

六月まで、この島で過ごす方が良いだろう。

あと二週間もすれば、シャアリィの新しい杖も完成する。

そうなれば、多少、レベルアップも加速するのではないかと、楽観的な見立ても出来る。


冒険者ギルドでは、週に一度持ち込まれる特級魔石によって特需が生まれていた。

新たな大型住居、施設の建築が進み、道路の舗装や区画整理等も重なる。

結果、魔石の需要は増え、売却価格が上昇、冒険者はその恩恵を受ける。


とは言え、負の側面もちらほらとある。

混みあう通常ゴーレムの狩場から、足を延ばし、上級に挑んだ挙句の死亡事故。

パーティ同士の狩場の取り合いや、揉め事も増えた。

それは、どんな場所でも起きることであり、エンダーベルトが特別という訳ではない。


むしろ、今までそういう問題が起きなかった方が珍しい。

それ程までにエンダーベルトは、ゴーレムという資源が豊かな場所なのだ。

新しい試みには新しい失敗はつきもの。


巨像島が込み合う中、ローマン島のエンダーベルト迷宮に挑戦するような者も増えた。

何処から流れてくるのか、エンダーベルトの冒険者人口は増加している。


・・・


随分と昔から貼られている迷宮踏破のクエスト案内。

そこに書かれている内容に、シャアリィが飛びついた。


『踏破者には、エンダーベルト迷宮魔石売り上げの二パーセント、巨像島の魔石売り上げの一パーセントが踏破年金として与えられる』


だが、アイシャは首を横に振る。


「私達は、ただでさえ目立つんだからね」

「特級の魔石だけでも、相当に人目を引く」

「その私達が踏破に向かって動いたら・・・」

「悪意の標的になるのは目に見えているでしょう?」

「それにね・・・マッピングっていうのは、すごく時間が掛かる」

「六層が終わりだって確定してるわけでもない」

「この諸島群の魔物の活性密度からすれば、ザグレブホーンみたいなことだってあるかもよ?」


終わりのない迷宮・・・。


「そうだね、踏破は諦めよう!」

「スパっと決めた方が集中出来るし」

「私達の目的は、あくまでレベル上げだもんね」


シャアリィの気持ちもわからなくはない。

ずっと同じルーティンワークは、知らず知らずのうちに心を擦り減らすものだ。

それも二つの季節を跨いで続けるような長期間であれば、尚更。


アイシャは提案する。


「ここでの狩りが終わったなら、フェザーエリスか、イルオールドで休暇を取りましょう」

「さすがにずっと働き続けてたら、おかしくなる」

「本当はいますぐにでも、長期休暇を取るべきかも知れないけれどね」

「年末年始は休めたことだし、もう少しの間だけ頑張ろう?」


シャアリィは、その提案に喜ぶ。

イルオールドならば、『黒猫テラス』の姉妹店もある。

観光地はあらかた回ってしまったけれど、まだ、見ていないものだってあるだろう。


人間には、やはり、目先のことだけじゃなくて、少し先にある希望も必要だ。

そうでなければ、どうしても心が錆びついてしまう。


もうすぐ、船着場に何時もの船がやってくる。

顔見知りばかりになった船。

最近では恋文を貰うことも屡々(しばしば)。


――― 皆、希望が欲しいのだろう。


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