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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
331/395

『巨人の骸』の魔石

『巨人の骸』の魔石オークションまで、あと四ヵ月。

その封印術式が明かされた。


中級の水属性術式、ハイ・ウェイブ。

水属性の中級術式の中で最も強力な質量攻撃魔法であり、対群術式としても優れている。

対火炎術式では上級相当のインフェルノをも中和可能。

反面、アース・ウォールや、氷結属性魔法には逆に中和されてしまうという不利も持っている。

水属性は総じて貫通性能が弱い為、ランス系を百とした評価では七十五くらい。


『巨人の骸』の魔石には、驚くべきことにもう一つ、封印術式が存在する。


初級の暗影属性術式、カース・ポイズン。

弱毒とは言え、治療せずに放っておけば体力の二割程度を失う毒術式。

とは言え、近年のバランス型パーティはヒーラーが帯同する。

この術式が活躍する場面は少ないだろう。


この内容では、『千本足』の魔石のような高値は望めない。

しかも、『千本足』の魔石は、百年以上開かれなかった魔石のオークションだけに、ご祝儀相場になっていたこともある。

今回はせいぜい金貨千五百枚前後になるのではないか、というのが商業ギルドの見立て。


・・・


アイシャは公開された術式を知っても平然とした顔。

シャアリィも別に気に掛ける様子もない。

多少、預金の残高が増えることは喜ばしいことだが。


それより気に掛かっているのは、二人が現在持っている『廃棄の王』の魔石だ。

いっそあと腐れなく、アレクサンドルに返却するほうがマシかも知れない。

だが、既にロザリーには『破壊した』と伝えてしまってあることも問題だ。

今更、魔石が出てきたとなれば、二人とロザリー、そしてイザベラまでもの人間関係が破綻しかねない。

アイシャは、それ以上の事を考えると鬱になると思い、無理矢理に忘却する。


話は変わって、アンナから宝石の調達について質問があった。


「予算はどれくらいなの?」


というざっくりとしていて、悩む質問。

シャアリィは、自分の装備に掛ける費用だけに予算を決められない。

そこでアイシャは、破格の値段を提示した。


「杖も含めて金貨五百枚(五千万円相当)まで、なら、満足出来る宝石も入るよね?」


提示された金額に腰を抜かしそうになったアンナが首を縦にぶんぶんと振る。


「否、多分、そこまでじゃない・・・よ?」

「使うのは、サファイヤ、エメラルド、風の魔石と大きめのクリスタル」

「恐らく全部で金貨二百五十枚から三百枚には収まる」

「あんた達、一体どれくらい資産持ってるのさ・・・」


問われて語る程、間抜けではない。


「まぁ、全財産に近い出費でも、それに見合う出来なら払う価値はあるさ」


アイシャはそう言ってお茶を濁した。

実際、アイシャの持つ武具だけでも、相当の価値がある。

彗星棍にも、鵺斬にも、亜竜の魔石が使用されており、それだけで金貨千枚。

さらに、その二つはミヤマの銘入りの武具だ。

彗星棍ですら金貨五百枚、鵺斬なら聖金貨の束でも十分に買い手が付く。


今の二人にとって金貨千枚の価値は、数か月の収入という程度の認識しかない。


路銀を節約するために、沢の水を飲んで干し肉を齧っていた頃から、もうすぐ二年。

多少の贅沢はするようにはなったが、リゾートホテルの利用さえも一考してしまうくらいに、金銭感覚はしっかりしている。


「アンナだって随分稼いでるじゃない?」


と、シャアリィが問えば、


「本ってのは金喰い虫でね・・・思ったより貯金は少ないんだよ」

「でも、どうせ墓場まで持っていけるわけでもないし」

「使った方がいい金だってあるだろう?」


三人は顔を見合わせて、


「「「間違いない」」」


と、笑った。


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