表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
329/395

歩み続ける

シャアリィとアイシャは安全な場所を探すべく、来た道を少し戻った。

魔物の密度が薄くなる場所・・・それは、地質の境界付近。

但し、絶対ではない。

休息は取れるだろうが、野営となれば恐らく不可能だろう。

それ以前に、上級ならまだしも、特級と夜間戦闘なんて、ゾッとする所ではない。


上級に早い段階で見切りをつけたのが幸いし、まだ、狩りの時間は十分にある。

問題は二つ、アイシャの体力消耗とシャアリィの魔力消耗。

この島の狩りの良い所は、経験値は勿論だが、魔物の群れに飛び込みでもしない限り、魔物に囲まれるようなことがないということ。


それは即ち、どんな場合でも離脱するくらいならば容易であることを意味する。

戦闘が出来ない状態であれば、逃げればいいのだ。


・・・


十分な休息を挟んで、シャアリィとアイシャが狩った特級ゴーレムは五体。

当初予想していたよりも、かなり良いペースで狩れることに二人は喜んだ。

但し、これだけの数を仕留めるには、ロック・ゴーレムだけは避ける必要がある。

兎に角、コラプションが通り難いのは、かなりの苦痛を強いられる。


狩りの途中で、ターゲットを二つ惹いてしまった場合も厄介だった。

せっかく削った魔物を置き去りにして、一度、退避を余技なくされる。

それ以外には、取り立てて不便はない。


三日でアイシャのレベルがひとつ上がるならば、収入を度外視しても、特級を狩るべき。

斬撃耐性のある相手、つまりは苦手な相手と戦う為に経験値が余分に入るのだろう。

百三十を超えたばかりのシャアリィは、ここでの狩りを満足に終えた頃には、アイシャとのレベル差がほぼなくなるかも知れない。


「さて、帰ろうか」

「週のうち五日をここで過ごせば、まぁ、毎週レベルアップだね」

「ちょっと長い滞在になるかもだけど」


アイシャが帰路の途中でシャアリィの顔色を伺う。


「他で狩るより、全然、条件もいいし」

「私は平気」

「週に二日ものんびり出来てレベルアップも出来るなんてサイコーじゃない?」


グリーンノウズでレベル上げすることを考えれば、何から何まで条件が違う。

魔石による収入もあるし、駆け引きをするようなこともない。

『黒猫のテラス』程ではないにしても、お気に入りに出来そうなカフェもある。


不満があるとすれば、週五日は質素な料理で我慢しなければならないことくらい。

それでも、身体を休めるベッドがあるのだから、問題ではない。


・・・


その頃、アンナはシャアリィの杖の設計に入っていた。


貫通力特化の杖。

言葉にするのは容易いが具現化するとなれば、繊細な設計が要求される。

神木から削り出した三本の細い木材を螺旋状に束ね、中心のクリスタルに魔力を送り込む構造。

そこまでは最初から考えていたことだが、その細い木材のバランスが至難。

長さも、重さも、均一にする必要がある。

そして留め具についても、シャアリィの魔力を考えれば相当な強度が必要だ。


持ち手側には風雷の魔石とエメラルドを使い、出力を向上させる。

中間地点の留め具にサファイヤを用いて、シャアリィの基本属性である氷結魔力の底上げ。


シャアリィが大富豪ならば、大粒の金剛石一つで解決する問題だが、設計を満たす金剛石を買い求めるなら、聖金貨十枚を要するだろう。

武具に付ける宝石というのは、最悪の場合、破損するもの。

そんなものに聖金貨十枚を使えるのは、教会の枢機卿くらいだろう。


「ドラゴン・スレイヤーかぁ」

「実に夢のある話なんだけど、聞くのとやるのでは大違いだろうねぇ」


設計が一段落し、一人だけの工房のソファで、一人だけの乾杯。


「しかし、よく、あんな量産品の杖で名有りと戦ってきたもんだよ」

「正直、ドン引き」


くすくすと笑うアンナ。

思えば、こんなに誰かと関わったことなど、もう、十年も前の話。

冒険者だった両親が死に、婚約者に見放され、叔父に拾われた頃。


その叔父も又、不治の病に倒れて五年。

全くの素人からここまで辿り着いたのは、幸運か不運か。

人嫌いの根性曲がりになった所で、結局、心の根っこでは誰かの善意に期待している弱い人間。


だからこそ、あの二人のような燃え上がる魂に憧れる。

自分がもしも、彼女達の力になれるならば、きっと、それは生涯誇れる仕事だと。


微睡に落ちる刹那、窓から見上げた月は、何時もより綺麗だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ