手早く狩るには
数分後、また戦闘が始まった。
ビリーのパーティを横目にシャアリィとアイシャは、直進する。
何処まで進めば上級ゴーレムと遭遇するのか、今はまだわからない。
距離感を掴むためにも、直進以外の選択肢はない。
「ふふっ、いたよアイシャ、どうする?」
シャアリィに問われたアイシャは、そりゃあ決まっているだろうとばかりに、
「勿論、やるよ」
「私があのパーティのようにゴーレムを惹きつける」
「シャアリィは試したいことがあれば試せばいい」
「序盤でしか確認出来ないこともあるだろう?」
「但し、キャノンはなしだ」
シャアリィが確認したいことの一つ。
「じゃあ、カース・サークルから」
以前、セイレーンの襲撃から身を守った術式は、何をもって敵対行為と判断しているのかを確認する必要がある。
攻撃の意志を持って接近するという明らかな敵対行為以外に、シャアリィが確認したいのは、術式使用者が敵であると一方的に認識し、接近した場合も発動するのか?
と、いうことだ。
「近付くのは相当な危険が伴うけれど、シャアリィなら問題なさそうだね」
「但し、ゴーレムが足を止めたら要注意だよ」
「次の動きは術式使用か、身体を捩じって腕を振り上げるか、或いは両手による叩きつけ攻撃」
「どちらにしても、腕が届く範囲から退避するんだ」
先程の戦闘で見たゴーレムの行動パターンをアイシャがシャアリィに教える。
もし、シャアリィの思惑通り、カース・サークルが有効ならば、ゴーレムの体力を奪いながらの戦闘が出来る。
毒術式使いが単独行で戦う時の基本、持続ダメージの付加。
シャアリィはそれを試そうとしている。
但し、カース・サークルの場合、危険な状態になることも想定される。
それは『恐慌』が付与された場合だ。
立ち竦んで動けなくなる場合はマシだが、錯乱迷走することもある。
ゴーレムが錯乱したならば、それは小さな災害だ。
・・・
最初の戦闘、カース・サークルは術式者の認識でも発動することがわかった。
しかし、毒を付与しようとかなりの時間ゴーレムに接近した為に、やはり『恐慌状態』となり、結局は間を置かずアースランスで仕留めることになった。
こういう時に限って『麻痺』が発動しないのは、お約束。
「上手くはいかないね」
と、シャアリィががっかり気味にアイシャに話し掛けると、アイシャは、
「だからこそ、試すんだよ」
「ぶっつけ本番よりマシ、上手くいかなかったという結果があれば選択肢から外せる」
さて、次は・・・と、アイシャがシャアリィに実験の要望を聞く。
「あと、試しておきたいのは、コラプションかな」
「どの程度通用するのか・・・それは通常ゴーレムだけじゃなくて、上級や特級にも」
「でかすぎるから、サンド・ブラストの回復は使えないね」
シャアリィの要望を聞きながら、アイシャは魔石を抉る。
機能を停止したゴーレムの身体は思ったよりも、柔らかい。
鉄の外皮さえ破壊してしまえば、そこから先を掘り進めるのに苦労はなかった。
とは、言え、やはり普通の魔物よりは手間が掛かる。
「コレ、倒した後も、ちょっとした面倒だね」
そうは言うものの、ビリー・パーティよりも短時間で、二人は魔石を手にしている。
シャアリィが本気だったならば、もっとスムーズに出来ただろう。
「ペアで狩ると、結構、魔力使うから、回復剤てんこ盛りしないと、だね」
「いい加減、アレにも慣れてきたよ」
「後味さえなんとかなるなら・・・」
シャアリィの言葉に、アイシャは一考。
「今日は、時間まで狩って帰ろう」
「さすがにここの宿泊施設には魔力回復剤は置いてないし」
「明日以降も必要になるなら、ギルドで仕入れておいたほうがいい」
「滞在期間分集めた所で、そんなに重いものでもない」
・・・
コラプションは、やはり、通常ゴーレムを瞬殺。
最早、イカサマのような速度で魔石が溜まる。
通常ゴーレムであれば、アイシャだけでも討伐が可能だということも分かった。
但し、彗星棍で滅多打ちにするのだから、相当に時間は掛かる、が。
こうして初日、二十七個の魔石を手に入れて島を離れた。
ビリーのパーティは宿泊するらしく、帰りの船賃は二人で銀貨五十枚。
今日の狩りの成果からすれば、気にするようなことでもない。




