ゴーレム討伐開始
島に到着して最初に立ち寄ったのは、宿泊施設。
銀貨十二枚という価格設定は、離島のさらに離島という場所を考えれば高いものではない。
提供される食事の値段も本島の二倍程だが、提供があるだけマシ。
離島故に水は貴重かと思ったが、海水を浄化する水の魔石を使ったプラントがあるために、その心配さえもない。
ただ、全てにおいて、現金或いは魔石での支払い。
魔石での支払いは、銀貨百八十枚相当・・・これは冒険者ギルドの買い取りと比べて一割程手数料が乗せられている計算だ。
案内地図も用意されており、アイシャは手早く要所を紙に書き写す。
「島の外郭部分が、通常ゴーレムの発生地域」
「そこから中央に向かうにしたがって、上級、特級へと変わる」
「私達が目指す特級のゴーレム発生地域までは徒歩で一時間少々歩くことになるね」
それを聞いたシャアリィが、
「じゃあ、中央を目指して突っ切ろう」
等と豪胆な事を言う。
皆の狙いが同じ魔物の場合、横取りはご法度。
これだけ広い狩場であっても、魔物の密度の濃い、薄いから自然とパーティが集まってしまうこともよくある話。
「通常のゴーレムを乱獲すると周囲に迷惑掛けるからね」
「他の冒険者に嫌われたら、思わぬ所で損をする」
「特級は無理でも、上級乱獲なら結構なレベル上げになる、と、思うよ」
アイシャの言い分にシャアリィも同意し、
「じゃあ、通常のを狩りながら、上級ゴーレムさんに会いにいこう」
島は巨大な擂鉢状になっている。
外周だけが盛り上がり、そこには原生林。
恐らくは、この島の地下は魔力に満ちており、そこがゴーレム出現の源泉。
故に、突然、地中から新手が生えてくることもある。
大型の魔物を相手にしている時に、ターゲットが増えるというのは、非常に厄介なアクシデントだ。
そのために、複数の軽装備アタッカーで対処する、というのがリスク回避。
アイシャとシャアリィには、そのリスク回避が用意されていない。
さらには、一人分の魔力で大型の魔物を倒すという、他の冒険者から見れば狂気のパーティ。
・・・
長い階段を登りきった所だけは、樹木が伐採されており、そこが狩場への唯一の入り口。
アイシャがコンパスを取り出して方位を確認すると、ほぼ北を示している。
この入り口を見失えば、巨像島からの脱出は出来ない。
「じゃあ、行こうか」
というアイシャの合図に、シャアリィの掛け声が重なる。
少し歩くと遠くからゴーレムの足音が聞こえてきた。
それに交じって冒険者達の声。
先程のビリーのパーティか、或いは宿泊組か。
「アイシャ、どんなふうに狩っているのか、見に行こう」
シャアリィの提案にアイシャも頷き、音のするほうに向かって歩く。
平原で繰り広げられていたのは、恐らく、この島でのスタンダードな戦術だ。
そこにいたのは、やはりビリーのパーティ。
ゴーレムの物理攻撃射程ギリギリを縫うように軽装の戦士がターゲットを惹いている。
ゴーレムは僅かに届かない間合いの戦士を追いながら、時折、術式を使う。
詠唱陣が発生すれば、もう一人の戦士が、
「来るぞ!」
と、術式を避ける指示を出す。
その間、術式使い達は、あらゆる術式でゴーレムを攻撃する。
十分程度の攻防で、ゴーレムの膝が地に落ちても、まだ、術式は止まらない。
何故ならば、ゴーレムの外装を破壊しなければ魔石を取り出すことが出来ないからだ。
動かないゴーレムに向かって、至近距離から術式を浴びせ続ける。
軽装備の戦士から攻撃中止の合図が出されて、そこからさらに五分程。
ようやく魔石をゴーレムから取り出すことに成功したようだ。
その様子を眺めていたシャアリィが、
「うわー、めんどくさそう・・・」
と、感想を漏らす。
だが、戦士が取り出した魔石は、かなり大きく、労力に見合うものだとわかった。
「十二人でやって、多くて一時間に二体、狩りの出来る時間が五時間」
「魔石の価格が銀貨二百枚、それを十体で銀貨二千枚」
「一人あたり銀貨百六十枚少々の実入りから、船賃銀貨十枚を差し引いて・・・」
「日当は銀貨百五十枚(十五万円相当)か・・・」
アイシャが素早く計算し、
「悪い狩りじゃなさそうだね」
「毎日帰るより、船の時間に左右されない泊まりのほうが効率がいい」
と、早速、宿泊する気でいる。
「通常のゴーレムなら、シャアリィのランスで三発って感じだね」
「魔石を掘るのも、私が彗星棍を使えば、かなり時短出来そうだ」
アイシャの抜け目なさに、何時もシャアリィは感心する。




