定期便
午前八時三十分。
既に冒険者の列が出来ている桟橋。
十人の術式使いと、二人の軽装備アタッカー。
冒険者ギルドのレクチャー通りの編成。
迷宮探索などの通常パーティは、三人から八人程の編成であることが多い。
それを考えれば、やはりゴーレム特化の編成。
手に持つ装備から見て、結構な熟練者に見える。
その列の後ろにシャアリィとアイシャが並んだ。
二人に気付いたパーティ・リーダーと思しき男が声を掛けてきた。
「よう、新顔さんだね」
「俺はこのパーティのリーダー、ビリー」
「船待ちってことは、ゴーレムか?」
「まさか、二人で?」
「それとも何処かのパーティと話が着いてるのか?」
問われた内容はごく自然な流れだろう。
アイシャは慎重に言葉を選んだ。
「ああ、初見なんでね」
「とりあえず、どんなものか見てみようと思って」
「やれそうなら二人でやるし、そうでなければパーティを探すよ」
ビリーは、アイシャの腰に吊るされている片刃剣を見て、くすりと笑う。
「成程、初見ね・・・剣は使い物にならないし、さすがに術式使い一人じゃ魔力が持たないだろう」
「まぁ、物は試しって言葉もあるくらいだ」
「ヤバいと思ったら深手を負う前に撤退するんだぜ?」
善意の忠告なのだから、素直に従っておこうとシャアリィが返事をする。
「ありがとう」
「とりあえず、頑張ってみます」
・・・
大きめの漁船のような船が到着した。
三十人くらいは乗れそうだ。
先行便は、どうやら、この十二人パーティとシャアリィ、アイシャだけのようだ。
船には帆もなく、オールもない。
あるのは接岸用の竿とロープ、それと固定された座席、操船室だけ。
どうやら、魔石を動力として動かす船らしい。
後部の操船室には屋根も風防もあり、小雨程度ならどうにか運航できるようだ。
船賃は片道銀貨五枚。
十人以上で出発、十人に満たない場合には十人分の銀貨を支払えば出発出来るが、そうでない場合には休便となる。
又、三十人以上集まれば冒険者達と相談の上で、臨時便を出すこともある・・・らしい。
シャアリィとアイシャは、船頭に船賃を支払い、後方の座席に座った。
鍛冶屋で使われる手回し砥ぎ機のような音が船の下から聞こえてきた。
船の後方には白い飛沫が立ち、どうやら水中の水を何かで掻き混ぜているようだ。
ゆっくりと船が進み始め、船頭は操船室で操舵や出力の調整をしている。
小さな船ながら、その速度は帆船よりもかなり早い。
手漕ぎのボートと比較すれば、十倍程の速さではなかろうか。
この速度であれば、ものの数十分で、巨像島に到着するだろう。
案の定、ちょっとした会話をするくらいの時間で、巨像島に到着。
以前、『巨人の骸』と戦った島よりも、かなり大きな島だ。
ビリーが、シャアリィとアイシャに声を掛ける。
「狩場への出方がわからないなら、付いてくるといい」
「歩く速度は緩めてはやれないが、見失うような場所じゃないから安心しな」
実に有難い提案だが、シャアリィとアイシャはそれを断った。
「まず、いろいろな施設や情報を見たいので、ゆっくり行きます」
「お気遣いありがとう」
シャアリィが余所行き用の笑顔を見せれば、ビリーは少し顔を赤らめて、
「そうか・・・じゃあ、気を付けてな」
と、言い残し、仲間の輪の中に戻っていった。
シャアリィはアイシャの耳元で、
「ちょっと愛想良すぎた?」
と、舌を出して笑う。
アイシャも笑いながら、
「あれくらいがちょうどいいさ」
「でも、アンソニーの時みたいに、勘違いさせたら可哀想だから、程々にね?」
そういうアイシャも、自分が知らないだけで、レリットランスでは随分と人気だった。
さて、と、一呼吸。
「大きな魔物はそれだけ大きな魔石が期待できる」
「それにレベルも高い」
「気合を入れて、泣き言を言わないようにしようか」
シャアリィはアイシャの言葉に頷き、かばんからチョコレートを取り出す。
「帰ったら、そろそろ補充しないと」
そう言いながら、何時ものようにアイシャに手渡した。




