巨像島
随分と取り掛かりが遅れたが、もう一つの目的であるレベル上げ。
それを成す為にはゴーレムを討伐しなくてはならない。
二人は、冒険者ギルドで、ゴーレムについてのレクチャーを受けた。
「ゴーレムと一絡げにした時、それは自立で動く人形を示す」
「土人形や石像獣のような迷宮に出現する自動人形も広範囲で解釈すればゴーレムの一種ということになる」
「だが、基本的にゴーレムと言えば大型の自動人形」
「その材質は様々で、泥だけでなく、木材、岩石、金属、宝石等多彩だ」
「中でも多いのは、ロック・ゴーレムとアイアン・ゴーレム、カッパー・ゴーレム」
「総じて土石属性が多く、動きは緩慢」
「しかし、その大質量から繰り出される物理攻撃を受ければ、タンクでも耐えられない程に強い」
「さらに術式攻撃を得意とし、近距離に近付くのは相当の危険が伴う」
「ウッド・ゴーレム以外は、非常に強い斬撃耐性を持ち、近接アタッカーにとっての相性はかなり悪い」
「基本的な戦術は、多人数の術式使いによる中距離術式戦」
「それでも討伐には時間を要する強力な魔物だ」
「雷撃による術式が最も効果が高い」
参考になったような、ならないような、と、シャアリィは思った。
自分たちに必要な情報は、やはり現地で実際に戦ってみるしかない、とも。
まず、シャアリィの懸念は、ペアという構成。
それは即ち、総合火力の問題。
シャアリィが魔力切れになるまでに、仕留めきれるか・・・それが最重要だ。
勿論、戦力としてはアイシャの物理攻撃やウインド・ブラストも手数に入る。
だが、アイシャの魔力は術式使いと比べれば、相当に少ない。
ウインド・ブラストを多用するには無理がある。
ゴーレムの体力が予想を上回って高い場合には、何らかの工夫が必要になるだろう。
・・・
船着場から出る定期便は、午前九時と午前九時三十分の二回。
安息日には定期便は出ない。
戻りの巨像島発の便は、午後五時と午後五時三十分の二回。
島の一部には結界が施され、セーフティ・ゾーンとして機能しているらしい。
しかも、その結界の中には治癒院、宿泊施設まであるというのだから驚きだ。
当然と言えば至極当然。
例によってこの島でも治癒師は慢性的に不足しており、パーティに同行する危険を冒さずとも、治癒院で勤務すれば良いのだから。
今日は既に舟に乗り遅れた二人。
「なんか、忘れてない?」
と、シャアリィがアイシャに質問を投げると、アイシャは、それは・・・
「カフェテラスをまだ見つけていない」
と、微笑んだ。
あの器用な武具職人ならば、きっと、極上のデザートだって作れるだろう。
でも、二人が求めているものは少し違う。
それは心の贅沢。
何の用意もなく、ふらりと立ち寄って数枚の銀貨で買える幸福。
予想もしない発見と、予想通りの快感のコラボレーション。
そういうものがカフェにはある。
そして、それは思わぬ所に。
桟橋にある案内地図は、きっと、かなり前からあるものだ。
だから、そこに書かれていて、残っているカフェテラスならば、きっと。
アイシャは、そう考えて幾つかのカフェテラスの名前を覚えた。
そして、あの雑多の店が集まる市場へと足を運べば、記憶した店の名前が見つかった。
『シー・ドラゴン』
タツノオトシゴという名前のカフェは色褪せた看板の店。
でも、店から漂う珈琲の香りは、実に良いものだ。
アイシャはシャアリィに、多分、いい店だ、と告げる。
割と広い店内は程々に込み合い、店員に声を掛けようとすれば、
「空いている席に適当に座っておいてね」
と、先んじて店員から教えられた。
通り側は硝子張り、その並びに二人用の席を見つけて、シャアリィとアイシャが腰を下ろす。
メニューはそれ程多くはないが、定番のものは揃っている。
先程、鼻腔をくすぐった匂いから、シャアリィは、
「カフェ・ラテをお願いします」
と、言い、アイシャも、
「私もカフェ・ラテ、それとチーズ・ケーキを」
店員の了承の声が届き、二人は窓の外の人の流れを眺めた。
シャアリィが思わず声を上げる。
「なんで、ロザリーがこんなとこにいるの?」
「ちょっと、引っ張ってくる」
と、店を飛び出して行った。




