表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
321/399

スパイス・スープと設計

その日のディナー。

旧世界の文献を頼りに、アンナがスパイス・スープを作った。

大量のスパイスを粉上になるまで砕き、それを鍋で炙り、目に沁みる煙を浴びながら・・・。

出来上がったペーストをバターで伸ばし、水を入れて煮立てる。


肉、野菜もスパイスで下味を付け、バターで炒める。

それらを鍋に投入し、具材に味が沁み込むまで煮込む。


なんとも手の掛かる料理・・・旧世界では、これを家庭で作っていたというのだから驚きだ。

恐らくは何らかの技術で、時間短縮していたのではなかろうか。


「随分と辛そうなスープだね?」


深皿に盛られたスープを見てシャアリィが呟く。

その匂いを吸い込んだ途端に、胃が刺激され食欲が沸き起こる。

思わず唾を飲み込む程に唾液が分泌されている。

アンナが別の皿に赤い塊を乗せてテーブルの上に置く。


「こっちはチキンのスパイスまぶし揚げ、だよ」


同様に香ばしい匂いが鼻腔をくすぐる。

じゃあ、頂こうか、と、アイシャがスープを一口啜る。

そして、案の定、(むせ)た。


「けほっけほっ・・・凄い量の香辛料だね、少し舌が痛いくらいだ」

「ん?んんん?・・・これ、美味しいよ・・・私の味覚がおかしくなったのか?」


その様子を見ていたシャアリィも、思い切ってスープを啜る。


「辛い辛い・・・だけじゃない、美味しい、なにこれ」

「肉、やわらかーい、しかも味が沁み沁み、野菜も別物みたいに美味しい」


得意気な顔で、アンナもスープを口にする。


「まぁ、料理ってのは、正しいレシピを使えば再現性のあるもの」

「つまり、化学や工学と同じなんだよ」

「実際ね、私の作る武具も、私と同じことをすれば、同じものが作れるんだ」


アイシャが問題点を指摘する。


「理屈の上ではそうなんだが」

「同じことをする、同じことが出来る、というのが難しいんだよ」

「多分、それこそが鋭敏な感覚や、経験、洞察力が必要になるわけで」

「繰り返し積み上げるしかない部分なんだよね」


そうそう、と、アンナも頷く。


「繰り返し積み上げる中で見つかる非効率を排除し、洗練させる」

「今、食べているスープの中にも、多分、余分なスパイスも混じってるんだ」

「或いは使う量をより的確に出来る余地は残されている」

「全ては設計から始まるんだよ」

「例えば、もう少し辛味を抑えて、より濃厚な味にしたければ、バターの量を増やせばいいし、煮る野菜の種類を減らせば、もっと、クリアな味わいになるだろう」


アンナの言わんとすることをシャアリィが口にする。


「私の杖も、どんな設計にするかによって、その能力に違いが出る」

「そういうことだよね?」


口直しのソーダを飲みながら、アンナが答える。


「正解」

「貫通力を上げる、攻撃範囲を広げる、有効射程を限定する代わりに能力を底上げする、逆に有効射程を極限まで伸ばす、いろいろな設計があるよ」

「私の杖は、使用者の望みを叶える武具だ」

「あえてアドバイスするなら、やはり、貫通力特化がいい」

「シャアリィには魔力制御の才能は十分に備わっている」

「視力もかなりいい」

「貫通力特化なら、一撃で相手の急所を撃ち抜くことも可能だろう」


アイシャは理解する。

アンナの才能は、少しづつ積み上げたトライアンドエラーの集積であり、その才能は徒労を厭わない探究が為した成果なのだ、と。


「武具職人を辞めても、料理人として生き残れるな」

「あとは片付けにももう少し拘りがあればいいのに」


アイシャの小言に耳を塞ぐアンナだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ