アンナの頼み四
材料探し。
商談の時に口にした手伝いの一つ。
「買うと結構な値段のする材料をね、迷宮で少しばかり手にいれて欲しいんだよ」
「タウロスの角とか、ラミアの鱗とかね」
「この領地内にも、一つだけ迷宮があるんだ」
「本島に一番近い、ローマン島」
「この島にしかいない固有種も結構いるから、注意は必要だけどね」
やはり迷宮か・・・と、シャアリィもアイシャも身構える。
「エンダーベルトはゴーレムで有名な場所だから、巨像島で手に入る資源は、他の冒険者からも適正な価格で買える」
「でも、皆、巨像島ばかりに行ってしまうから、ローマン島のものは結構高いんだよ」
「木人の小枝でさえ、値が付くんだからね」
「頼みたい資材は、嵩張るものもあるから、無理はしなくていい」
シャアリィは一度約束したことに関しては、なるべく守りたいと思う。
「それ程沢山でなくてもいいなら、大丈夫だよ」
「強烈にヤバい奴はいる?」
「以前、溶解性出血毒で死にそうになったんだ・・・アレは嫌だ」
アンナが目を丸くして答える。
「よく命があったね?」
「相当に運がいい」
「大丈夫、致死性の毒持ちはいないよ」
「そう言えば、ペアで、ヒーラーなし、タンクなし・・・か」
「よく、今まで戦ってこれたもんだ」
どうやら、二人の戦歴をアンナはまだ知らないらしい。
アイシャは、自分たちの素性を明かすことにした。
「ああ、最高に運は持ってる」
「レリットランスを踏破し、四つの名有りを討伐しても、まだ生きてるんだからね」
「実際、自分たちの強運には感謝しているよ」
アンナの目の色が変わる。
「迷宮踏破者で、名有りの討伐者・・・まじか」
「あの一撃、相当な腕だとは思っていたが、とんでもないな」
シャアリィが、にやにやしながら、答える。
「職人ギルドでも、冒険者ギルドでも、聞いてみればわかるよ」
「でも、私達の目的は、もっと先にある」
「もっと先というよりも、ただの固執なんだけどさ」
麦酒を喉に流し込んで、シャアリィは続ける。
「あなたの武具があれば、それが叶うと思うんだ」
「私達は『ドラゴン・スレイヤー』になる」
「二人だけで挑んで、倒すんだ」
「その為に北の果てまで旅をして、終には南の果てまでやってきた」
妖しく輝く金色の瞳、アンナは目を反らせない。
「成程ね」
「私の武具も歴史に残るかも、だ」
アンナの目がアイシャの腰の片刃剣に注がれる。
「それ、ミヤマの剣だよね」
「しかも、銘入りの」
「剣は専門じゃないから、あまりよくわからないけれど」
アイシャは不敵に笑って頷く。
「流石だね」
「これはミヤマの特級刀剣の一振り、鵺斬」
アンナは納得したように、そして、憧れを湛えた目で呟く。
「ドラゴン・スレイヤーか」
「いいね、最高の杖を作ろうじゃないか」
アンナのモノクルの向こうで、鳶色の目が輝いた。




