アンナの頼み三
この辺で食事の美味しい店をアンナに問う、シャアリィ。
しかし、アンナは余り食に興味がないらしく、別に何処でもいい、と、言う。
「ここにしようか」
と、アイシャが指差したのは、いわゆる居酒屋のような店だ。
少しばかり高級感があり、個室も完備。
客足も申し分なく、店を出る人間の顔にも満足が見て取れた。
「女性三人、個室をお願いします」
と、アイシャが店員に告げると店の奥に近い場所の一室に案内された。
「アンナ、お酒でも、料理でも、好きなものを頼んでね」
そういうシャアリィの言葉に頷くアンナだが、どうにも落ち着かないらしく、周囲をキョロキョロと観察している。
最初の注文を終え、個室の扉が閉まると同時、アンナは大きな吐息を吐いた。
「私ね・・・第三級封印指定技師なんだよね」
「他の土地の人間と一緒にいる所を見られると、少しばかり面倒なんだ」
冒険者の封印指定については多少知っているものの、技師の封印指定については初耳のアイシャが、少しばかり詳しく教えて欲しいと、アンナに頼む。
「第一級は、教会の施設に隔離されちゃうやつ」
「第二級は、指定エリア外には出られない」
「第三級は、領地の外に出てはいけない」
「簡単に言えば、私達が作る武具は領地、国家間のバランスを壊しかねない、と」
「もし、エンダーベルトじゃなかったら、私は二級相当らしい」
「ここは離島だからね、封印にはもってこいなんだよ」
シャアリィは、それを聞いて気に掛かったことをアンナに問う。
「私に武具を作るのは、大丈夫なの?」
アンナは上を向いて、それに答える。
「そのへんはグレーだね」
「教会や領主からの依頼の品を納期通りに作ってる間は、少なくとも文句は言われない」
「と、思う」
それを聞いて、シャアリィは胸を撫でおろす。
アイシャが空気を入れ替えるように、次のリクエストについての話をする。
「思うんだが、アンナ、街で売っている魔具を幾つか買った方がいい」
「そうすれば今のような惨状にはならないだろう?」
「私達が一度片付けた所で、あの散らかり様は、常習的な面倒くさがりだからな」
「根本的な解決が必要だ」
まるで、一度も考えたことがなかったかのように、否、実際、考えたこともなかったのだろう。
アンナは、その提案を受け入れる。
「そうか・・・生活魔具か・・・見落としていたよ」
「明日、早速、付き合ってくれ」
「そうか・・・何故、気付かなかったんだ」
シャアリィが、その答えを口にする。
「面倒くさがって引き籠ってるからでしょう」
「どうせ、何年かに一度、掃除屋さんとか呼んで片付けてたんでしょ?」
図星を突かれたアンナが、初めて見せる恥じらい。
「何故、わかるし」
「まぁ、これからは少しばかりマシになるよ」
その時、扉をノックする音が聞こえた。
どうやら、料理が運ばれてきたらしい。
テーブルの上に、所狭しと注文の料理が並ぶ。
チキンのトマトソース煮、ハンバーグ、コーンサラダ、フライドポテトにエビフライ・・・柔らかいパンとクリーム・チーズ。
アンナが食べたがったものは、何処か子供じみている。
シャアリィも、そういうものが好物だが、アイシャは流石に見ただけで胸焼けしそうだった。
子供じみていると言えば、アンナの行動もそれに当て嵌まる。
先代ペリントスが叔父ということは、両親は既に他界しているのだろうか。
ただ、三人の距離が少しばかり近くなったのは確かなことだろう。




