職人という奴は
その杖は、まるで自分の腕の延長。
軽く、細く、それでいて強靭。
これが未完成だとは到底思えない。
・・・
「さて、互いに力を見せた所で商談と行きたい所だが、私にはやらなくちゃいけない仕事が山程溜まってるんだ」
「きみの武具を作るにも、このままじゃ、どれくらい先になるか、わからん」
「そこで提案なんだが、私の手伝いをするならば、きみの杖を作ろう」
「値段は、武具に入れる宝石次第」
「素のロッドの価格は、きみが言った通り、金貨百枚でいい」
「私の譲歩はそこまで」
「後は返事次第かな」
アンナの実力の片鱗を見た以上、シャアリィは折れるしかない。
視線でアイシャに同意を求めた。
「手伝いって?」
この手の話で、今まで散々痛い目を見てきたシャアリィとアイシャ。
どうせ、ろくでもない危険な仕事をさせられるのだろう、と、警戒する。
「お遣いみたいなもんだよ」
「家事やら、材料探しやら、配達やら、受け取りやら」
「雑用も雑用」
アンナの言葉に嘘の気配はなく、それなら問題ないとアイシャは判断した。
「商談成立、で」
「早速だが、何をすればいい?」
アンナは家事をやれと言う。
「まずは書斎の片付け、バスルームの掃除、食事の準備かな」
「仕事を早く片付けるにも、効率化が重要」
「整理整頓は必須だ」
「気分転換にもなるし」
シャアリィが文句を言う。
「なんで、それくらい日頃から、やってないんだよ」
「一応は女でしょう?」
「ガサツすぎない?」
アンナは平然として、
「それだけ制作に没頭しているってこと」
「きみも実感したでしょ?」
「私の技術」
「木を削り出すって言っても適当に削って、こうはならないよ」
「緻密で入念な計算が必要なんだ」
「家事やってる時間、あると思う?」
アイシャは、そう言われれば納得するしかない、と、判断した。
「言い分はわかった」
「だが、私達にも準備がある」
「今日は、宿に引き上げて、明日から取り掛かるとしよう」
シャアリィを納得させる為に、
「家事で済むならいいじゃないか」
「危険な狩りの依頼より、余程マシだ」
アイシャの言葉に、それもそうかと頷きながらも、シャアリィは思う。
何故、何時も一筋縄で行かないことばかりなのか、と。
「何でもやるけれど、ちゃんと作ってよね」
「骨折り損なら、許さないから」
二人は、それ以上、アンナを追及することを止め、帰路についた。




