天才武具職人
「雑魚扱いしたことは謝るよ」
「しかし、きみ、途中で止めることだって出来ただろうに」
「何故、撃った?」
「しかも、直後に魔力切れで、ぶっ倒れるとか・・・」
「馬鹿なのか?」
市街地で術式を使えば、流石に衛兵にどやされるが、何故か衛兵は来なかった。
衛兵が駆け付けた所で、枢機卿勲章を見せればそれまでなのだが。
アンナ・ヘリントス。
二十九才。
先代ヘリントスである叔父の元で修行し、十年程。
彼女の作る武具にはテーマがあり、芸術性にこだわりがある・・・らしい。
シャアリィのような狂気は理解出来ず、極めて理論的に物事を捉える。
「馬鹿なのかって?」
「まぁ、否定は出来ないね」
「冒険者なんてやってるのは、多かれ少なかれ馬鹿なんだからさ」
シャアリィの返事に、ぐうの音もでないアンナだった。
話を切り替えるようにアイシャがアンナに問う。
「この子のロッドか、杖をオーダーしたいんだが」
「幾らくらい掛かる?」
アンナはそっぽを向いたまま、
「まだ、作るとも、受けるとも、一言も言ってないんだが」
「私は、ただ、話を聞くと言っただけさ」
シャアリィは、それを聞くと、
「じゃあ、他所で頼むとしましょう」
「一流なのは噂だけらしいし」
「期待外れの的外れ、こういうこともあるでしょう」
と、平然とした顔で言う。
それを聞いたアンナは黙ってはいられない。
最早、喧嘩腰だ。
「作らねえとも、受けねえとも言ってないがな」
「そんな安物のワンドで、あれだけのキャノンを撃てるんだから、確かに相当強いんだろうし、修羅場を潜っても来たんだろう」
「だが、私がロッドを作ったなら、最低でも二倍の出力は出るね」
シャアリィも黙ってない。
「口じゃ何とでも言えるよ」
「それが本当なら、金貨の五十や百、即金で払うけど」
アンナは、にたーっと厭らしく顔を歪め、
「そこにある杖、まだ未完成なんだがね」
「それを試せば、私の実力がわかるさ」
「宝石すら入れてない、一見、ただの棒っ切れ」
「だが、その杖は樹齢三百年を超える霊木から削り出した本物」
「一流の術式使いなら、一目で気付くかと思ってたけど」
「才能に恵まれただけのお嬢ちゃんには無理か」
確かに見た目では、シャアリィには分からなかった。
「試してあげようじゃないの」
「借りてもいい?」
仕草で好きにしろ、と、アンナが嗤う。
シャアリィは杖を手に取り、工房の外に出た。
杖を構えた瞬間、身体の中の魔力が即座に杖に収束する。
「うわ・・・なにこれ」
その反応を見て、アンナがにやにやしながらシャアリィに言い放つ。
「一番ちっさい術式でも体感できるよ」
シャアリィは、アイス・ショットを短縮詠唱した。
「飛べ!」
杖の効果は目に見えて現れる。
発動ラグが短く、威力は増して、氷の礫の速度は速い。
振り返ると、アンナがどうだ、と、言わんばかりの顔をしていた。




