エンダーベルトの街
冒険者ギルドで地域冒険者章を得て、冒険者が宿泊するような宿屋を紹介してもらった。
観光客や金持ちが好む商業施設と若干距離が離れている為、宿泊費も安く、何より魅力的だったのは、キッチンを備えている所だった。
長期滞在になれば、毎回、外食というわけにもいかず、適当な料理で食事を済ませられるのはありがたい。
まずは、一週間の契約。
そこからは滞在期間に合わせて延長するということで話がまとまった。
商業ギルドでは、生活に使うための金貨、銀貨を口座から出金。
二人は顔を見合わせ、これからどうするかを話し合う。
「シャアリィの新しい武具を見に行くか・・・」
「それとも・・・」
アイシャが言おうとしていることをシャアリィが先に口にする。
「お気に入りに出来そうなカフェテラスを探す?」
まだ、陽も高く、夕食にはかなり早い。
「まだ時間もあるから、先に職人街をぶらつきましょう」
「初日から、そうアレコレする必要もないし」
「とりあえずは、物の値段の相場とか、確認したいね」
商業ギルドを一歩出ると、そこは高級商店街の入り口。
美しい意匠の看板を見るだけでも、高級店であることが見て取れる。
恐らく、この周辺の物価は場所代込み、通常価格よりも相当に高いだろう。
「アイスクリームが銀貨二枚!?」
イルオールドの物価の三倍近い値段に二人は開いた口が塞がらない。
高いとは思っていたが、さすがに肝が冷える。
とは言え、シャアリィとアイシャが普段使いのように通っていた黒猫のテラスのアイスクリームも、銀貨一枚なのだから、結局の所、その場の雰囲気なのだろう。
こんな価格の商店街でも十分な人足があり、この街の経済が潤っていることがわかった。
宿に向かって少し戻ると、先ほどの綺麗な区画とは打って変わった雑多な店が立ち並ぶ区画、いわゆる市場のような場所があった。
古くからの地元住人が経営している、利用している、そういう店ばかり。
その奥には、職人街。
この街の職人が作っているものの代表と言えば、当然、魔具だが、人々の生活に必要なのは魔具だけではない。
大工道具、料理器具、裁縫道具、金物から紙に至るまで、殆どの品物が職人街にはある。
一際大きな建物が、この街の職人ギルドだ。
「職人ギルドに寄って武具を扱う店や、腕のいい職人を教えてもらおう」
アイシャの提案を断る理由もなく、シャアリィも頷く。
「おう、お嬢さん達、こんな所に何の用事だい?」
何処に行っても最初はそう問われる。
まさか、この少女達が冒険者などとは初見では見破れまい。
だから、話をスムーズにするためにも、冒険者章を提示することにしている。
「クラス3の冒険者・・・アイシャ・セロニアスって・・・あのネームド・キラーか」
話が早くて助かるとばかりに、アイシャが要望を伝える。
「私達がこの街に来た理由の一つは、武具の新調」
「相方の術式使いに相応しい武具を探している」
受付を担当していた男は、それならば・・・と、
「職人街の北の外れに工房がある」
「棟梁の名は、ペリントス・・・この街の最高の武具職人だ」
「だが、値段も一流、おまけに変人」
「それでもいいなら、そこを訪ねるといい」
シャアリィは目を輝かせる。
「まぁ、一流の職人って大体、変なひとだよね」
「とりあえず行ってみるよ」
それがお遣い地獄の始まりとは、知る由もない。




