総力戦
反撃しなくては、前に進めない・・・。
しかし、ジャミングで守らなければ無防備になった身体に術式を喰らう。
シャアリィは思考しながら、『廃棄の王』の術式を壊し続ける。
(相当な魔力を消費しているはずなのに、どうして、まだ撃てる?)
(何故、質量戦で勝る土石より、火炎の術式が多い?)
(本当に理性が壊れているのか?)
(だとしたら・・・)
シャアリィの望んだ隙が生まれた。
それは同じ術式を二度連続で使ってしまうという致命的なミス。
上級術式は再使用制限時間があり、それは術式の不発という形で現れる。
「報復を!」
「ぶち撒け!」
その一瞬の隙、シャアリィが選択したのは、ヴェンジェンスとアイス・ブラスト。
しかし、シャアリィの中級術式では、有効射程から僅かに離れている。
『廃棄の王』は、その身に幾つかの小さな傷を受けただけ。
しかし、その小さな傷から氷結が生まれ、
「貫け!」
一歩踏み込んで放ったシャアリィのアース・ランスが、『廃棄の王』の脇腹を抉る。
シャアリィが一瞬の手応えを感じた刹那。
それは牙を剥いた。
くぐもった声で『廃棄の王』から、放たれたのは、風雷の上級術式。
(トルネード!)
シャアリィがすぐさまジャミングで迎撃するも、周囲に発生した真空刃がシャアリィの身を刻む。
『廃棄の王』も又、ヴェンジェンスの呪いの報復効果で、その胸に大きな傷を負う。
だが、『廃棄の王』は、ダメージなど関係ないとばかりに次の術式を詠唱。
受けた痛みに判断を鈍らせたシャアリィを襲ったのは、
土石属性上級術式、地震。
シャアリィは、ただジャミングの術式を叫ぶしかない。
「解けろ!」
シャアリィは歯噛みしつつ、残り七メートルの距離が埋まらない。
(あと二メートル)
(そこまで辿り着けば、カース・シャドウが使える)
(それで王手)
(それまで持ってよ・・・私の魔力)
術式とその破壊の応酬。
再び『廃棄の王』が、隙を見せた時こそが決着の時。
突如、意表を突く、『廃棄の王』の緩手。
(え?ファイヤー・ボール?)
それは、シャアリィにしてみれば、身を捻るだけで躱せる術式。
その一瞬に躊躇いもなく、シャアリィが突っ込む。
カース・シャドウの間合いに踏み込んだシャアリィが叫ぶ!
「閉ざせ!」
ほんの一瞬であろうと視界を奪うアドバンテージ。
突然視界を奪われた『廃棄の王』は、自分の身体に何が起きたのか確かめるように杖を持たないほうの掌で己の顔を覆った。
シャアリィは、足を止めることなく、距離の壁を突き崩す。
身を低くして滑り込んだその先、『廃棄の王』の膝にシャアリィの手が触れた。
「腐れ!」
神経伝達の速度で駆け抜ける致命の腐敗。
・・・
恐るべきは『廃棄の王』の本能の反射。
自らの脚を付け根から、ウインド・ランスで叩き切る。
まるでそれは甲殻類の自切が如く、ゾンビィ特有の赤黒い血を撒き散らし、地面に転がりながらも術式を詠唱する。
勝利を確信したシャアリィにジャミングの用意はない。
煉獄の炎の蛇インフェルノが、シャアリィの片腕を燃やし尽くす。
「ぎゃああああああああああああああ」
バトル・コーラスを終え、備えていた、アイシャとフランコが救援に奔る。
「よくもシャアリィをおおお!」
大きな叫び声を上げ自身に突っ込んでくるアイシャに『廃棄の王』は、ストーン・バレットを放つが、アイシャはそれを軽々と避け、破壊の元凶たる『廃棄の王』の首を刎ねる。
そのまま首のない身体に馬乗りになって、魔石を抉るべくダガーで滅多刺しにする。
傷口がぐじぐじと蠢き、まるで足が生えたかのように首が胴体に向かってずるずると動く。
アイシャは鵺斬で頭の天辺から貫き、その動きを床に封じる。
遅れてフランコがシャアリィの元に辿り着き、のたうちまわるシャアリィにエンジェリック・ヒールを使用するが、既に左腕が燃え尽き、無残にも傷口が癒着しただけに終わる。
抉り出した魔石を手に、アイシャは変わり果てたシャアリィを呆然と見つめた。




