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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
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幽閉区画

人差し指の迷宮最下層、高度術式障壁結界、別名、幽閉区画。

最下層全域を覆う結界は、術式を用いた破壊作用の全てを閉じ込める。

その維持費は、西方大教会の予算の二割近くにもなる。

昼夜を問わず、外部からマジック・シールドの術式を展開し、それを障壁に送り込むことによって維持される結界。


内部からの脱出は、ほぼ不可能だが、外部からの侵入に関しては扉を二つ開けるだけ。

その扉に至る通路は、教会の許可を得たものだけしか通れない。


「フランシスコ司教も同行されるのですか?」


通路の衛兵に尋ねられ、フランコが答える。


「ああ、遺書は既に預けてあるよ」

「問題ない」


この扉は誇張なく一方通行だ。

百名以上の犠牲を出して、この結界に『廃棄の王』を追い込んでから数十年。

討伐に挑んだ者は誰も帰ってこなかった。


「この扉の向こう、右側に隠し棚があります」

「そこに帰還を知らせるハンドベルが置いてありますので、六度だけ鳴らして下さい」

「そうすれば、我々がこの扉を開きます」


なるほど、その為の中和領域通路か、と、フランコは感心する。


「二つ目の扉にも、当然、安全機構があるのだろう?」


フランコの問いに、衛兵が答える。


「二つ目の扉には識別効果があります」

「中和領域を通過した者は扉を開ける権利がありますが、二つの扉の向こうにいる『廃棄の王』には、扉を開ける権利がありません、一時的な避難場所として機能するように設計されています」


フランコとアイシャが示し合わせる。


「シャアリィが被弾した場合、回収してここまで運んで治癒」

「勿論、その場で間に合えば、臨機応変」

「私達はなるべく離れて備えよう」

「シャアリィとやつの戦闘に巻き込まれてバックアップどころじゃなくなる」


衛兵が三人の顔を真剣な眼差しで見つめる。


「倒せずとも、ここに戻ってきて下さい」

「ご武運を・・・」


重苦しい軋みを上げて、一つ目の扉が閉まると、不自然に明るい光が通路を照らす。

敷き詰められた絨毯が足音を消す。


「ここだフランコ、ハンドベルの棚」


僅かな凹凸をアイシャが見つけ、脱出用アイテムの位置を知らせた。

二人が不安に息を潜める中、シャアリィだけが通常運転、否、戦闘前から滾っている。


「アイシャ、やつは何処?」


索敵を頼まれたアイシャが全神経を耳に集中させる。


「左側正面、動きはない」


それを聞いたシャアリィが、じゃあ、行くよ、と、戦闘開始を告げた。


「出て来い!」


クリエイト・クリーチャーによって作り出された魔物は、六本脚の蜥蜴(とかげ)だ。

その大きさはシャアリィよりも少しばかり小さいが、蜥蜴としては巨大。

真っ黒な身体、青い縦縞、一見すると有毒種にも見えるが、恐らくそんな上等なものではない。


「出来るだけ敵からの攻撃を避けて注意をひきつけておいて!」


命令を与えた後、魔力回復剤を喉に流し込み、キャラメルを口に含む。

続いてシャアリィは、ファントム・ムーブを使う。


「俊足を!」


まるで別れを告げるように、シャアリィはアイシャの額に接吻(キス)をした。


「ぶち殺してくるぜ!」


お道化て微笑むシャアリィを追うように、二人も扉を出る覚悟を決めた。

シャアリィは扉を少し開いて、クリーチャーを先行させる。

硬質な氷結音が鳴り響き、クリーチャーが会敵したことを知る。


アイシャと絡めた指から擦り抜けるようにシャアリィの指が離れる。

そして、扉を開け放ち、シャアリィの疾走が始まった。

距離にして二十五メートル、会敵時間にして約三秒。


しかし・・・。


クリーチャーは初撃で撃破され、その三秒は永遠とも思える程に長くなる。

シャアリィの行く手を阻む土の壁。

ジャミングでそれを崩壊させた向こう側、上級火炎術式インフェルノの炎の蛇が飛び込んでくる。


シャアリィはさらに術式で、それを破壊。

ほんの数歩、前に出ることがこれ程までに難しい。


どうやら敵も又、短縮詠唱を使うらしい。

それも当然、相手は最上級の精霊使役者(エレメンタル)


そんな相手を前に、確実に距離を詰める。

シャアリィも又、只者ではない。


残り十五メートル。


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