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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
304/395

折れるわけにはいかない

アレクサンドルが帰り、応接間に平穏が戻る。

それは平穏というよりも静寂・・・死を予感させる無音。

これが因果応報ならば、その通り。


黙っていては気が狂うとばかりに、アイシャが席を離れ、キャビネットからフランコの取って置きの高級酒を引っ掴んで乱暴にテーブルの上に置く。

普段ならば抗議するはずのフランコも、自らグラスを用意する。

シャアリィには、二人の気持ちがわからない。


水も氷も入れずに、グラスにただ酒を注ぎ、フランコがそれを煽る。

アイシャはそれを横目に、同じように酒を注ぎ、グラスの隅に唇をつける。


「決まっちゃったんだから仕方ないよ」

「私は負けない、だから・・・そんな顔はやめて?」


シャアリィの言葉にアイシャは同調出来ない。

フランコが苦痛を絞り出すように謝罪の言葉を吐く。


「済まない・・・私が間抜けで鈍感だったせいだ」

「全く予想すらしてなかった・・・アレクサンドルの思惑に気付かなかった」

「融合個体の魔石なんて欲しがらなかったら、こんなことには・・・」


その謝罪は、シャアリィを愛しているアイシャに向けたものだろう。


「そうよ!」


激情を込めてアイシャが、甲高く喚く。

だが、続く言葉は自分自身を責めるものだった。


「でも・・・悪いのはフランコだけじゃない」

「私も、こんなことになるなんて、全然、考えたこともなかった」


そう言うと、グラスの酒を無理やり喉に流し込んだ。

シャアリィは、この痛々しい空気が我慢出来なくなり、二人の頭上に言葉を浴びせる。


「誰が悪いとか、何が悪かったとか、そんなのもうどうでもいいでしょ?」

「こんな状態のまま突っ込んだら、それこそ、あの世行き」

「もう、ステージは変わったんだ」

「二人とも切り替えなよ!」


フランコとアイシャは、シャアリィを見つめて、尚も謝罪を重ねる。


「あまりにも危険過ぎる」


「私達はアレの前では無力に等しい」


シャアリィは埒が明かないとばかりに、話の方向を捻じ曲げた。


「じゃあ手伝ってくれないの?」

「私一人だけでやればいいの?」

「ええ、一人でもやるよ?」

「それでいいなら、何時までもそうやって愚図愚図してなよ」

「此処で、こんな薄汚れた街で、人生終了なんてまっぴら御免」

「こんなこと早く済ませて、フローズン・ドラゴンを倒すんだ」

「折れるには、まだ早い!」


氷結龍。

あの忌々しい恐怖を植え付けた相手の名を聞けば、アイシャの覚悟に火が灯る。


「・・・こんな所で負けるわけにはいかないね」

「フランコ、少しでも責任を感じるなら、手を貸して」

「シャアリィと私を守って」

「あなたがいてくれれば、私達は負けない」


フランコは(しか)めっ面のままで、アイシャの求めに応じる。


「筋は通すさ」

「何時かアレクサンドルにも思い知らせる」

「この私を出し抜いたことを」

「私が必ずアイシャとシャアリィを守る」


そして、キャビネットの中から融合個体の魔石を手に取って、シャアリィに渡す。


「これは私からの謝罪だ」

「出来れば使ってほしくない術式が入っている」


まるで闇夜のような魔石の中心部に、小さな白い輝きが見えた。


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