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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
303/395

オークション告知と枢機卿

季節が冬に大きく動き、グリーンノウズの空にも曇天が広がる。

グリーンノウズ商業ギルドから各地の領主府傘下の全てのギルド、連合国内の全ての大教会に『巨人の骸』魔石のオークションが知らされた。


開始価格:金貨千枚

開催日:五百三十七年四月一日。

参加資格:開始価格金貨以上の預金残高保有者でアーシアン連合国の主たる組織に属している者。


エンダーベルト行きの客船が出る日まで、あと二日。

残された短いグリーンノウズでの時間をシャアリィとアイシャはきままに過ごしていた。


・・・


十六番教会の門に馬車が止まる。

それも黒塗りに金十字の教会の迎賓馬車が。

そこから降りてきたのは、聖衣を纏った初老の男性。


赤い詰襟には金色の獅子の刺繍。

クリムゾン・アレクサンドル枢機卿。


フランコにさえ知らされていなかった突然の来訪の目的。

それはシャアリィとアイシャへの面会だった。

フランコの時間稼ぎも間に合わず、寝室で部屋着のままで寛ぐ二人が応接室に呼ばれた。

こうなってはフランコも二人を枢機卿に会わせないわけにはいかない。


「やぁ、アイシャ、シャアリィ」

「こちらにいらっしゃる方はわかるね?」


顔は知らずとも、佇まいと上等な聖衣を見れば理解してしまう。

作法を知らない二人はとりあえず深く腰を折って、頭を下げる。

それを見たアレクサンドルが、


「楽にし給え」

「出立に間に合って良かった」

「馬車を出した甲斐がある」


と、楽し気に言った。

フランコに勧められて空いているソファに腰を下ろした二人だが、枢機卿が一介の冒険者を訪ねてくるなど前代未聞、何かまずいことをしたのかと、心中は穏やかではない。


「名有りの討伐者だと聞かされたが、随分と若く、なかなかに可憐」

「フランシスコが随分と世話になっているようだね」


そういうアレクサンドルも、枢機卿という立場を考えれば十分に若い。

フランコとは違い、身だしなみの隅々にまで手入れが行き届いている。


・・・


フランコがお茶を入れ、様々なことを聞かれ、話した。

何処を旅してきたか、何が楽しかったか等、他愛のない世間話。

まるで親戚の祖父のような優しい口調に、二人が心を許し始めた時、空気は一変する。


「人差し指の迷宮、その封印区画への入場申請があったようだが・・・」

「二人が出立するのであれば、取り消しても構わないかね?」


どうやら、シャアリィがジョンソンにネームド連戦を言い放った後、ジョンソンが教会に申請を出していたらしい。

アイシャが、それについて謝罪と申請の取り下げを口にする。


「お手数を掛けて申し訳ありませんでした」

「私達が挑むには、時期尚早、申請は取り下げさせて頂きます」


アレクサンドルはアイシャの言葉を聞き、フランシスコに尋ねる。


「アレが、片付けばどれ程西方にとって幸いなことかと期待していたんだがね」

「お前の見立てでも、この二人には勝ち目はない、そういうことか?」

「まぁ無理強いはしまい、アレの前で臆病風に吹かれても、それは当然」

「しかし惜しい」

「いい加減、教皇様にも気付いて頂かなければならん」


アイシャは耳を疑った。

枢機卿が教皇を批判するなど、許されることではない。

だが、続く言葉はもっと辛辣だった。


「そろそろ、椅子を立って頂かなければならんな?」

「フランシスコよ、そうは思わないか?」


優し気な眼差しは消え、権力に爛々と目を輝かせる支配者の貌。

狂気の笑みを湛えながらアレクサンドルがシャアリィを(そそのか)す。


「私にはお見通しだよ」

「アレを倒したくて仕方ないというきみの欲望さえも」

「もしも、叶えてくれたならば、アレの魔石をやろう」

「私が討伐証明を発行すれば良いだけのこと」

「何もあと腐れなどありはしない」

「私も喉から手が出る程欲しいが、相応の礼が必要だからね」

「なあに、激しい戦闘の折、惜しくも破壊してしまったことにすればいい」


霹靂。

アイシャも、シャアリィも、フランコさえもが身体を固くする。


「それとも、枢機卿署名入りの命令書を発行すべきかね?」


拒否すれば、それは大罪。

職権濫用ここに至れり。


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