勝算
二日間の乱獲を経て、八百個少々の魔石を積み増し、二度目の術式獲得に挑んだ。
この結果次第で、最終戦か次の街への移動かをシャアリィは選ぶ。
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シャアリィの獲得した術式は、凡庸ながらも有用性の高い移動速度向上スキルと、奇妙な自爆スキルだった。
これまでの戦闘の中で発見した問題がある。
それは、シャアリィの『ジャミング』に起因するものだ。
あらゆる術式をジャミングは破壊してしまう。
それは自分たちに掛けてあるエンチャントも例外ではない。
シャアリィが『ジャミング』を発動した時点、その周囲五メートルは、瞬間、術式が存在しない空間になる。
それは例えパッシブ・スキルであっても例外ではない。
次の瞬間にはスキルが補完されているから影響はほぼないが。
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『ファントム・ムーブ』
移動速度三十パーセントの向上。
術式対象は、自分及び任意の個人。
連続使用可能。持続時間三十分。
『ヴェンジェンス』
自身が受けたダメージの二百パーセントのダメージを攻撃者に返す。
即死ダメージであっても、術式は有効に機能する。
持続時間三十分。再使用制限十二時間。
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勝算はある。
クリエイト・クリーチャーで、囮を召喚し攪乱を指示。
ファントム・ムーブで、急接近する。
ヴェンジェンスで、不測の被弾に備える。
ジャミングを駆使し、敵との間合いを詰めれば詠唱速度で押し切れる。
カース・シャドウで、敵の視界を奪い。
コラプションを叩き込む。
これは、精霊使役者と、陰根源転換術師の総力戦だ。
最悪、相討ちになったとしても、アイシャがその魔石を抉り出せば勝ち。
瀕死の重傷を負ったとしても、フランコが最上級治癒を使えば、世は事も無し。
シャアリィは、同意を得るべく、戦術をアイシャとフランコに話す。
アイシャは、首を縦に振らなかった。
フランコも同様に、それじゃあ、まだ、博打の域を出ない、と、シャアリィの戦術を否定した。
「さぁ、この話はお仕舞だ」
「新しい旅路がきみ達を待っているじゃないか」
フランコは一つ手を叩き、席を立つ。
アイシャは沈痛な表情のまま、寝室に向かった。
応接室に一人残されたシャアリィは、ソファに身体を投げ出して天井を見つめる。
愚痴を零す相手もなく、テーブルに残されたワインをグラスに注ぐ。
「得るものはちっぽけな自己満足」
「失うものは命」
「ははっ、確かに天秤が釣り合うはずもない、か」
どうしてだろう。
何故、自分はこれほどまでに『廃棄の王』と戦いたいのだろう。
強くなったと増長した果てにあるのは、あの日と同じ報い。
そうか・・・私は、今、死にかけているのか。
欠落した危険への意識。
シャアリィは初めて自覚した。




