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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
302/395

勝算

二日間の乱獲を経て、八百個少々の魔石を積み増し、二度目の術式獲得に挑んだ。

この結果次第で、最終戦か次の街への移動かをシャアリィは選ぶ。


・・・


シャアリィの獲得した術式は、凡庸ながらも有用性の高い移動速度向上スキルと、奇妙な自爆スキルだった。


これまでの戦闘の中で発見した問題がある。

それは、シャアリィの『ジャミング』に起因するものだ。

あらゆる術式をジャミングは破壊してしまう。

それは自分たちに掛けてあるエンチャントも例外ではない。

シャアリィが『ジャミング』を発動した時点、その周囲五メートルは、瞬間、術式が存在しない空間になる。

それは例えパッシブ・スキルであっても例外ではない。

次の瞬間にはスキルが補完されているから影響はほぼないが。


・・・


『ファントム・ムーブ』


移動速度三十パーセントの向上。

術式対象は、自分及び任意の個人。

連続使用可能。持続時間三十分。


『ヴェンジェンス』


自身が受けたダメージの二百パーセントのダメージを攻撃者に返す。

即死ダメージであっても、術式は有効に機能する。

持続時間三十分。再使用制限十二時間。


・・・


勝算はある。


クリエイト・クリーチャーで、囮を召喚し攪乱を指示。

ファントム・ムーブで、急接近する。

ヴェンジェンスで、不測の被弾に備える。

ジャミングを駆使し、敵との間合いを詰めれば詠唱速度で押し切れる。

カース・シャドウで、敵の視界を奪い。

コラプションを叩き込む。


これは、精霊使役者(エレメンタル)と、陰根源転換術師(ネクロマンサー)の総力戦だ。

最悪、相討ちになったとしても、アイシャがその魔石を抉り出せば勝ち。

瀕死の重傷を負ったとしても、フランコが最上級治癒を使えば、世は事も無し。


シャアリィは、同意を得るべく、戦術をアイシャとフランコに話す。


アイシャは、首を縦に振らなかった。

フランコも同様に、それじゃあ、まだ、博打の域を出ない、と、シャアリィの戦術を否定した。


「さぁ、この話はお仕舞だ」

「新しい旅路がきみ達を待っているじゃないか」


フランコは一つ手を叩き、席を立つ。

アイシャは沈痛な表情のまま、寝室に向かった。


応接室に一人残されたシャアリィは、ソファに身体を投げ出して天井を見つめる。

愚痴を零す相手もなく、テーブルに残されたワインをグラスに注ぐ。


「得るものはちっぽけな自己満足」

「失うものは命」

「ははっ、確かに天秤が釣り合うはずもない、か」


どうしてだろう。

何故、自分はこれほどまでに『廃棄の王』と戦いたいのだろう。

強くなったと増長した果てにあるのは、あの日と同じ報い。


そうか・・・私は、今、死にかけているのか。

欠落した危険への意識。

シャアリィは初めて自覚した。


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