表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
301/414

贅沢

向かう先は商業ギルド。

金貨二百十枚はずっしりと重く、持ち運ぶには不自由この上ない。

まずは口座に入金した上で、少し豪勢な買い物をすることにした。

旅を続ける身の上では、豪勢な買い物と言っても所詮は値の張る食材程度。


シャアリィが真っ先に候補に挙げたのは、マグロのトロ。

それならばとアイシャは海鮮に合うライス・ワイン。

山葵や塩気の効いた大豆ソース、口直しにはミルフィーユ。

上等な桃とオレンジ、フランコの土産にはテキーラ。


店先に並ぶ冬物のコートも欲しかったが、次の街は常夏の島。

まだまだ震える程の寒さでもなく、衝動買いは先送りにされた。

買い物を終えて、フランコ邸に戻ると家の主はソファに寝そべり、融合個体の魔石を眺めていた。


「やぁ、随分と買い込んできたね」


と、身体を起こして、無造作に魔石をソファに放る。

シャアリィは両手の空いたフランコに、テキーラの瓶を差し出して、


「お口汚しの安酒ではありますが、召し上がって頂ければ恐悦にございます」


と、歌劇の悪徳商人のようににやりと笑う。

フランコも、それに乗っかり、


「ほほう、良き心掛け、其方の思う所、申してみよ」


と、同調すれば、アイシャは手を叩いて笑う。

シャアリィは、油紙に包んだ大振りなトロの切り身をフランコに見せ、


「上手に切れるか心配だから、フランコに頼もうと思って」


と、差し出すものの、フランコが首を横に振る。


「私は聖職者だからね」

「必要最低限しか刃物に触れてはいけないんだ」


それが嘘か本当か・・・アイシャは嘘の気配を読もうとするが、


「どうやら本当みたい?」


との結論に、「じゃあ、私が切るけど文句はナシで」、シャアリィに包丁が渡った。

アイシャは生菓子と果物を魔石冷蔵庫に仕舞い、ライス・ワインの栓を開ける。


「珍しいモノを買ってきたね」


と、フランコが小さなグラスを差し出し、ここに注げと催促した。

注がれたソレを一息に飲み干し、満足気に長い息を吐く。


「さぁ、シャアリィ、トロを切るんだ」

「コレは魚料理との相性が抜群の酒だ」


割烹での切り身を思い出しながら、シャアリィが程好い厚さの刺身を盛る。

テーブルに置くと同時、フランコのフォークがそれに刺さる。


「おい、神父、食前のお祈りはなくていいのか!」


アイシャの抗議も痛痒とせず、薬味をナイフで塗りつけて、大豆ソースを少し垂らす。

そして、おもむろに口に運び、フランコはその食感を存分に堪能する。

嚥下した後に心を込めて、


「神の慈しみに感謝します」


などと言うのだから、シャアリィもアイシャも呆れてしまう。

何処までも自由で、のらりくらりと自在に世間を渡り歩く。

それでいて筋を通すべきを通す、そういうフランコの生き方は、シャアリィやアイシャには真似が出来ない。


「もう、一人だけつまみ食いして、ずるい」


三人分の刺身を切り終えたシャアリィが、アイシャの手からグラスを受け取って、和やかな宴が本格的に始まった。


「あとは、シャアリィの二回目の術式取得だね」

「壱千六百少々残ってるから、あと二日潜ろうか」

「そうすれば多分、余裕を持ってやれると思う」


アイシャの言葉に頷きながら、シャアリィは考えていた。

二人を納得させるだけの術式を手にすることが出来たなら、『廃棄の王』に挑む、と。

ただ、この和やかな宴に水を差すのは気が引ける。


今はただ、自分だけの心の中。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ