思惑の果てに
ジョンソンは呟く。
「そうか・・・そういう方法もあったか」
「俺にゃあ思いつくはずもないが、ね」
毛むくじゃらの太い腕が、大きな革袋を持ち上げて、それをカウンターに乗せる。
じゃらじゃらと音を立てて革袋がたわむ。
中から金貨を取り出して、十枚づつを積み上げる。
並んだ金貨の列は、三十。
「三百枚だ」
「俺の取り分は九十枚・・・これに署名を」
named:巨人の骸
討伐報酬:金貨三百枚
完遂署名:アイシャ・セロニアス、シャアリィ・スノウ
・・・
預託証書:巨人の骸の魔石
預託先:グリーンノウズ冒険者ギルド
預託者:アイシャ・セロニアス
・・・
オークション売却同意書
売却物:named:巨人の骸の魔石
開始価格:金貨千枚
オークション開催日:オークション告知後二百日以内
特約条項:冒険者ギルドが落札価格の半分を得る代わりにオークションの告知、滞りない実施、集金、売却者への入金までの一切を責任を持って行う。
その管理責任を、商業ギルド及び領主府が保証する。
売却者:アイシャ・セロニアス
入金口座:アイシャ・セロニアス
・・・
ジョンソンの顔からは、あの癇に障る表情は消え失せ、ただ優し気な笑みがある。
「キラーズ、世話になった」
「締まらねぇ結末になっちまったが、楽しかったよ」
「俺はさ、もう少しだけマシな仕事をしたかった」
「この街で、ただ時間を浪費するような仕事から足を洗いたかった」
「もう、若くはない」
「そのうち後任が決まったら、お前たちが稼がせてくれた金を持って、この街を出ようと思ってるんだ」
「何時か、何処かで会ったなら、互いにシカトはナシだぜ?」
「そん時は、稼いでる方が酒を奢る」
「ふっ、まぁ、俺がタダ酒にありつくためのルールだな」
アイシャは、それに文句をつける。
「原資はくれてやったんだから、あんたが稼いで奢るんだよ」
「いい年したおっさんが小娘に酒をせびるなんて、恥を知れ」
「私達は、これでも普段は慎ましく生きてるんだ」
「ろくでなしにタダ酒を奢る義理などないね」
シャアリィも、笑って同意する。
「次はもう少しマシな街に行きなよ」
「そこで、人参畑でも耕して、ちゃんと働け」
「まぁ、あんたの人生だ」
「好き勝手やって、好き勝手生きて、好き勝手に死ぬがいいよ」
悪ぶっているが、根はいい奴・・・きっと。
シャアリィとアイシャは、顔を見合わせた後、別れの言葉を告げた。
「元気でね」
「コネっこもね」
開きっぱなしの扉の向こうでアイリーンが文句を叫ぶ。
二人は聞こえないふりをして、ろくでなしの街の雑踏へと歩き出した。




