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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
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利害の不一致

砂漠の中でオアシスに辿り着くように、二人はドルフィン・テイルの扉を開けた。

少しばかり草臥(くたび)れて、潮の匂いを纏う二人。

もしも、初見の客だったならば追い出されても仕方がない。

季節外れのビーチ、草臥れてはいるものの整った容姿、見覚えのある顔。

ドルフィン・テイルの店員が親切にも、蒸しタオルを用意してくれた。


「チーズ・スフレとパンケーキ、されからホット・ドッグ・・・」

「アイシャも食べるよね?」

「それを二つづつ、あとは、アイス・コーヒーも二つ」

「一つはソフトクリームをトッピングで!」


長い長い呪文のようなオーダー。

アイシャは塩気に塗れた顔を蒸しタオルで拭い、顔を緩ませる。


「天国だな・・・これ」


他に客がいないことを幸いに、少女がやってはならない蛮行。

シャアリィも天国を味わうべく、蒸しタオルを顔に乗せる。


「まじ天国」


苦笑しながら、店員がアイス・コーヒーを運んできた。

アイシャはそれを一気に飲み干して、


「すいません、アイス・コーヒー追加で」


目を輝かせながら、甘味の到着を待ち侘びた。


・・・


蒸しタオルのお礼にと、会計に多めのチップを渡し、満足して冒険者ギルドに向かう。

仕事からの帰宅時間なのか、普段は閑散としたギルド前の通りにも、ちらほら人影がある。

さすがに夜風が冷たくなってきたからか、冒険者ギルドの扉が閉じていた。

手前に引いて扉を開けると、受付カウンターでアイリーンがネイルを塗っている最中。

二人を一瞥し、


「マスター、キラーズ生きてたよ」


と、ジョンソンを呼んだ。


「随分と久しぶりだな」

「てっきり逃げたか、雲隠れしたか、そんなことも考えてたんだ」

「此処にきたってことは、殺ってきたってことだろ?」


早く見せろと催促するように、ジョンソンが魔石の精算皿をアイシャの前に置く。

アイシャは、ナップサックから防水布を取り出して、丁寧に解いてゆく。

どうだ、と、言わんばかりに取り出した魔石を見せつける。


「嵐に巻き込まれたのは難儀だったが、討伐は楽勝」

「どうせ金貨の持ち合わせはないんだろう?」

「さっさと小切手を書け」

「ああ、二つに分けて書いたらちょろまかしがバレるか」


考えてもいなかった不備を突かれたジョンソンが、


「そうだな、精算は明日に持ち越しだ」

「口座から金貨を降ろしてくるさ」

「魔石の預かり証書も明日発行する」


と、額に手を当てる。

ジョンソンの失態に口角を吊り上げたアイシャが次のカードを要求する。


「さて、ネームド連戦を宣言してはいるが、ルールはルールだ」

「次のカードを見せて貰おうか」

「それ次第では、私達は次のネームド討伐から手を引く」

「胡散臭いゲームは終了、適当に魔石を採取して、このろくでもない街を出る」

「結構な額を労せずして稼いだのだから、文句はないだろ?」


突然の撤退表明に、ジョンソンの声が少し大きくなる。


「おいおい、『人形師』は無理でも、『宝石荒らし』くらいはやれるだろ」

「賞金首なら手数料は一割でいい、やってけよ」


シャアリィがその言葉に首を振る。


「ジョンソン、私達が欲しいのは金銭じゃなくて経験値なの」

「賞金首で稼げる経験値なら、そこらへんの迷宮に潜れば二日で稼げる」

「面倒事なしの単純作業、魔石のおまけ付きでね」

「賞金首じゃ互いの利益が一致しないんだよ」

「宝探しなんて愚の骨頂」

「それを弁えて、カードを見繕って」


アイシャは、防水布に『巨人の骸』の魔石を仕舞う。

シャアリィがひらひらと手を振って、


「じゃあ、また明日」

「御機嫌よう」


そう言い残し、二人は踵を返し、冒険者ギルドを後にした。


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