表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
294/395

快晴の追跡

防水布だけで温まるには流石に限度がある。

持ち物を並べて見れば、焚火を起こすことが可能だとわかった。


着火用金属棒(ファイヤー・スターター)と度数七十パーセントのジン。

勿体ないが着替えの下着をジンに浸して焚きつけに使う。

そうすれば、生木でもない限りは火を起こせるし、一度火力を上げれば、維持は難しくない。


アイシャは意を決して、雨を絞っただけの濡れた服を纏い、焚火に使えそうな枝を集めることにした。

この風雨の中で、湿った生木と枯れ木の判別はシャアリィには難しい。

アイシャならば、セロニアス仕込みのサバイバル技術がある。


灯りは不燃カンテラがある。

火の魔石を燃料とするため、濡れていようと問題はない。

アイシャが枯れ木を集めている間、シャアリィは遮光壁を岩石片で組み上げる。

洞窟の外に光がなるべく出ないようにするためだ。


アイシャが戻ってきて、濡れた服を脱ぎ、ついでに拾ってきた長い枝にそれを通す。


枯れ枝を組み上げ、その上にジンを浸した布を置き、着火。

一瞬で火は着いたものの、布が燃える速度が思った以上に早い。

アイシャは濡れた枯れ木の水気を半渇きの布で拭き、そこにジンを垂らす。

焚きつけに使った布が燃え尽きる前に、ジンを含んだ枯れ木に火が移り、それを起点になんとか焚火を得ることが出来た。

シャアリィは、それを見届けて不燃カンテラの灯りを消す。


「やった、あったかーい」


シャアリィが喜声を上げ、アイシャはそれを見て顔が綻ぶ。

雨の中を駆け回った甲斐があった。

こうなれば、少々太い枝であろうと、問題はない。

濡れた服を絞って、火に掲げれば思ったよりも早く乾いた。

ただ炙っただけのチーズや干し肉が香ばしくて美味しい。


暗闇だった洞窟が炎で照らされ、粗末な食事で腹を満たせば、今度はアイシャが眠る番。

焚火の前に寝袋を広げて、やっと身体を休めることが出来た。


・・・


夜明けと共に嵐は去り、ほぼ無風の高空が広がる。

周囲のあちらこちらで木々が風になぎ倒され、地面の凹凸には小さな泥濘が沢山出来た。

この季節は、一雨毎に気温が下がる。

少し肌寒い風。


耳を澄ませば、遥か遠くから木を薙ぎ倒す音が聞こえてくる。

シャアリィとアイシャは顔を見合わせて、ほくそ笑む。


「間違いない・・・やつだ」


音が聞こえてくる先は西側の原生林エリア。

シャアリィとアイシャは戦闘に必要なものだけを持ち、駆け出してゆく。

今の二人は獲物を追跡する二匹の狼。


「シャアリィ、慌ててもいいことはない」

「泥濘で滑って膝をすりむいても、ジンをぶっかけるくらいしか出来ないよ」

「すっごく傷に沁みるんだからね」


アイシャが速度を落とし、シャアリィの手を取る。

シャアリィはにやりと笑って、


「あの時のスノウ・ウルフたちもこうやって合図しあったのかな」

「でも、私達には狼以上の知恵がある」

「お互いを確かめ合う言葉がある」


アイシャが言う。


「敵が止まり、こちらに進行方向を向けたら、それがやつの索敵範囲だ」

「打ち漏らした時に備えて記憶しよう」

「ボアや、バイコーンを発見しても、攻撃の意志がない限り無視」

「やつを見つけて原生林から東側に誘導しよう」


やがて、足音も聞こえ始め、その距離が近いことを感じる。

アイシャはポケットからコンパスを取り出し、方位を把握。


「そろそろ、こちらに向かってくる頃だが」

「所詮、やつの歩行速度では、私達には追い付けないから、近くまで接近したって構わない」


その時、こちらに向かって突っ込んでくるジャイアント・ボアが一頭。

だが、進行方向は、シャアリィ、アイシャの直線上にはない。


「やつの接近に気付いて、他の魔物が逃げているね」


ボアの逃走を見届けながら、さらに歩を進める。

その時、大きな衝撃音と木々が激しくぶつかる余韻が耳に入る。

その方向に目をやれば、まさに巨人というに相応しい体躯の魔物がいた。


一方的な視認。

他のゾンビィに比べて、『巨人の骸』は、随分と感覚が鈍いようだ。

まだ、シャアリィとアイシャに気付く様子がない。


シャアリィは思わず声を出して笑う。


「おじいちゃんかよ」

「耳遠すぎじゃん」


アイシャも全くだと同調して笑った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ