ボーナス・ゲーム
シャアリィが目を覚ます。
「ごめん、アイシャ、寝ちゃってた・・・」
振り向こうとするシャアリィの髪を撫でながら、アイシャが囁く。
「大丈夫、私がいるんだから、ね」
シャアリィは、小さく頷く。
外はさらなる暴風が吹き荒れ、悪霊の叫びのような風の唸りが聞こえる。
幸いにして風向きの正面になることもなく、洞窟に突風が吹きこむことはない。
「運が悪いね・・・私達」
「それとも、運が良かったのかな?」
何を以て、幸運だと言うのだろうか。
雨にずぶ濡れにならずに済んでいることだろうか、それとも少しでも休めることだろうか。
アイシャが思案していると、シャアリィは言う。
「こんな時でも、ひとりじゃない」
その言葉にアイシャの瞳が潤む。
それを誤魔化すように、アイシャは『巨人の骸』との戦術概要を口にする。
「私達は幸運だよ」
「この風雨が止めば、勝利は確約されたようなものだ」
「私達にしてみれば、ただ、でかいだけの相手等、敵ではないよ」
「おまけにゾンビィならば、当然、動きは遅いんだ」
シャアリィが疑問を口にする。
「じゃあ、どうして金貨三百枚なんて高額な討伐報酬が設定されてるの?」
アイシャが矛盾することを言う。
「でかい、からさ」
「ヒトの六倍もの大きさ、近接攻撃は下半身にすら届かず、尋常な剣や槍では貫けない」
「当然、矢による攻撃なんて、痛くも痒くもないだろうね」
「そうなれば有効な攻撃方法は術式に限定される」
「最も効果を発揮すると思われる火炎属性上級のインフェルノやエクスプロージョンなら、ダメージを与えることは出来るけれど、連続で撃てる術式じゃない」
「燃やし尽くすまで魔力が持つとも思えない」
「通常のバランス・パーティにはお手上げだよね」
それに・・・と、アイシャが続ける。
「『巨人の骸』は、属性が変化している可能性があるんだ」
「ここには暗影属性のエネルギーを支えるだけの環境がない」
「そんな場所で長い時間を過ごしていれば、当然、エネルギーが枯渇する」
「ここにあるエネルギーに適応しなければ、巨体を維持することは難しいと思うんだ」
「恐らくは水属性への対応」
「そうなれば、火炎の術式で焼き払うという戦術も効果的ではない」
だから、撤退が相次ぎ、その懸賞額が上がっていった・・・と。
シャアリィが、
「私達はどうやって倒すのよ?」
「フル・チャージのキャノンを撃てば、私だってふらふらだよ?」
アイシャは事も無げに言う。
「うん、一発あれば、いいよ」
「トゥエンティでもイケるだろうけれど、そこは念を入れて二十五カウントにしよう」
「それなら、まだ、魔力回復剤を飲んで、チョコを齧るくらいの余裕がある」
「私達にすれば、ボーナス・ゲーム」
「ザグレブホーンで既に戦術は完成している」
シャアリィがアイシャの意図に気付く。
「アイシャがイザベラのように走って、私の所まで持ってくる」
「私は、それを砲撃する」
アイシャが頷き、にやりと笑う。
「走るまでもないかも知れないね・・・でも、私が囮になって、シャアリィの射線に乗せる、その戦術で間違いないよ」
シャアリィの不安は、一つだけ。
一撃必殺は、成せるのだろうか。




