表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
290/395

商談成立

正午の教会の鐘が鳴り、アイシャの依頼を引き受けたフランコは、セブール商会へと足を運んだ。

コンテナを積み下ろしする埠頭には、五隻もの貨物帆船が停泊している。

収穫期を終え、小麦輸送のピークを越えた貨物帆船の積み荷は少ない。

セブール商会との交渉をするには都合の良い時期だろう。


「支配人はいるかね?」


と、フランコが銀枠純金十字を見せれば、例えフランコの顔を知らずとも、重要な客人であることは下っ端の船員にもわかる。

立派な三階建ての社屋、その玄関の影には武装した用心棒が数名。

八つの港を拠点とする大海運企業セブール商会。

受付嬢にとってはフランコは見慣れた客人であり、わざわざ用件を聞くまでもなく応接室に通される。


「おや、アレクサンドル閣下の子分が、こんな時期に何用かな?」

「教会のお咎めになるようなこたぁ、何もした覚えがないんだが」


出迎えたのは、あのビル・ジョビンスだ。


「やぁ、どうもジョビンス支配人」

「間に合わせの手土産で申し訳ないが、まずはこれを」


高級なブランデーのボトルをフランコがテーブルの上に置く。


「ふぅん、こんな上等なものを貰う覚えもないなぁ」

「と、なりゃあ、商談か、頼み事か」

「俺っちは、これでも忙しいんだ、早速、用件を聞こうか?」


フランコは小さな拍手をしてから、話を切り出す。


「さすがは支配人、話が早くて助かるよ」

「私の知り合いをちょっと面倒な所まで運んで欲しいんだ」

「手漕ぎボートを一艘つけてね」

「やってくれるか、どうか、やってくれるなら幾らでやってくれるか」

「手短に教えて貰いたい」


ジョビンスは顎に手を当て一考し、フランコの依頼を言い当てる。


「ボートを一艘つけろって、そんな変な要求は、あの島だろ」

「あそこにゃバケモンしかいねぇ、観光地でも、漁場でもない」

「どんなモノ好きなんだよ、そいつは」


フランコは何時もの飄々とした笑顔で答える。


「全くもって同意するね」

「そいつらは『象』と賭けをしていてね、あそこにいる魔物を狩るらしい」

「協力してくれるアテが、支配人くらいしか思いつかなくてね」

「『商談』に来たのさ」


ジョビンスが葉巻を取り出して、吸い口を切り落とし、火を着ける。

火が回るまで何度も葉巻を小刻みに吸い込んだ後、一際大きく吸い込んで煙を吐く。


「そいつは腕の立つ冒険者なのか?」

「あの島に降りても平気なくらいに」

「このブランデーを手土産にするくらいの価値はあるのか?」


話の行方が妖しくなり、フランコは内心舌打ちをする。


「ちょっとばかり頭の螺子が緩いやつらですよ」

「どうしてもと聞かなくてね」

「そのブランデーは、実は手土産じゃなくて、そいつらからの貢ぎ物」

「少しばかり金は持ってる」


ジョビンスは口角を吊り上げて、


「荷物の運び賃は、金貨三十枚(三百万円)」

「俺っちんとこの帆船なら余程のヘマをしない限り、セイレーンに乗り込まれる心配もない」

「ボートの代金に金貨十枚」

「帆船を動かすにゃあ人手がいる」

「そいつらの日当も出さなきゃならん」

「俺っちが考えた、良心的な価格ってやつだ」


アイシャやシャアリィが、クラーケンの目に留まるよりはマシだ。

そう判断したフランコは、苦虫を嚙み潰した顔をわざと見せる。


「ちょっと高過ぎないか」


ジョビンスは高笑いしながら、


「じゃあ、この話はナシだ」


と、平気な顔をしている。

それはこれ以上、交渉を続ける気がない、と、いう事だ。


「わかった、その額で頼む」


フランコが懐の革袋から、金貨十枚を纏め、四列、テーブルに置く。

ジョビンスは、金貨に手も触れず、商談成立を告げる。


「商談成立」

「明日の正午、穀物埠頭の一番船に連れて来い」

「勿論、時間厳守」

「十分遅れる毎に、金貨一枚を請求する」


フランコは愛想よく席を立ち、ジョビンスに礼を言った。


「感謝します」

「貴方に神の祝福があらんことを」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ