巨人の骸討伐カウントダウン
シャアリィの術式取得に使用された魔石の数は千三百四十四。
前回よりも四百程、必要数が上がった。
当然、次はさらに必要な魔石が増える。
二回連続挑戦は、魔石不足のリスクもある。
取得した新しい術式は・・・
『クリエイト・クリーチャー』
術式使用者のレベルに応じた魔物を生成し、コントロールする。
但し、生成される魔物を使用者が任意で選択することは出来ない。
生成された魔物は数分から数十分で消滅し、魔石は残らない。
再使用制限は六時間。
『カース・サークル』
自身の周囲約一メートルの範囲に暗影属性の影響圏を形成し、影響圏内及び、影響圏に触れた敵対者にランダムで呪いを付与する。
付与される呪いは、出血、麻痺、毒、恐慌、睡眠、その強度は影響圏干渉時間と使用者のレベルに依存する。
術式持続時間十分、連続再使用可能。
取得出来た術式は二つだけだが、その能力は脅威的。
「なかなかに面白い術式だね」
と、アイシャは満足しているが、シャアリィは少し物足りないようだ。
「なんかさ、大ダメージを与えるようなスカッとした奴が欲しかったんだよね」
「どっちのスキルも運要素があるし・・・」
アイシャは、じゃあ、もう一回、魔石貯める?
と、シャアリィに問う。
「それも面倒だね・・・実戦で使ってみてから決めるよ」
「ああ、中途半端に魔石残っちゃってるから、最終的にはもう一回術式追加したいね」
・・・
討伐対象ネームド『巨人の骸』は、迷宮ではなくフィールドにいる。
考えてみれば当然。
その体躯は直立すれば全高約十メートル。
迷宮内で活動するには、あまりにも大き過ぎる。
その出没場所は、海岸線からポツンと見える小さな島。
かつては漁師の島として栄えていた、ブルックメンソン島。
その島には、グリーンノウズ地域では珍しいアンデッド以外の魔物も生息している。
セイレーン、ジャイアントボア、バイコーン等がいるらしい。
島の東側に港街の廃墟があり、そこまでは舟で移動する必要がある。
当然、厄介なのがセイレーン。
島の近海に落ちれば圧倒的に不利な条件下での戦闘を余儀なくされる。
この街の海を支配するセブール商会でさえ、ブルックメンソン島を大きく迂回するという。
「舟・・・出してくれる人、いるのかな・・・」
シャアリィが口にした一言に、アイシャも頭を抱える。
「舟が見つからなければ、最悪、地力で舟を出すしかない」
「セイレーンがうようよいるかも知れない海の上を手漕ぎのボートで接近か」
「出来ることなら、やりたくないよね」
「まぁ、フランコならアテがあるかもしれない」
「聞いてみようか」
何時ものように礼拝堂で酒を飲む破戒僧。
この教会にシャアリィとアイシャが居候するようになってから、信徒が来たことは一度もない。
たまにふらふらと教会の外に出て、何か仕事をしているようだが。
それでいて、この裕福な暮らし。
余程、教会から報酬を得ているのだろう。
「フランコ、頼み事なんだけど・・・」
アイシャの呼び掛けに何時もの飄々とした笑顔で応じる。
「やぁ、アイシャ、今日はすっかり酔っているんだ」
「聞くには聞くけど、今日は動けないよ」
アイシャも笑顔で、
「明日でも、明後日でも、構わない」
「『巨人の骸』をやろうと思ってね」
その一言で、察したフランコが、
「舟の手配をしろと言うんだろう?」
「セブールに少々高い船賃を払うことになるが、構わないかね?」
アイシャは頷く。
「金で済むなら、別に構わない」
「厄介事にさえ巻き込まれなければね」
それは当然の要求だ。




