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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
288/395

ルーティン・ワーク

二日間の休息。

シャアリィは、アイシャの選んだ新しい戦装束を身を包む。

街歩きでも目立たない軽装が好みだし、露出についても余り気にしない。

イザベラのようにハーフ・プレート・メイルなど着たら、歩くだけで疲れてしまう。


そもそも、術式使いは被弾しないことが前提。

それに関しては、桁外れの動体視力、それに加えてジャミングまで持っているのだから、これ以上は望めない。

初見殺しや、不意打ち、アクシデントでもない限り、シャアリィがダメージを受けることはないのだから。


アイシャもそれを弁えて、戦装束と言っても動きやすさを重視した日常使いも出来るものを選んでいる。

アイシャ自身も、シャアリィと同様に前衛でありながら被弾を度外視した戦装束。

柔軟な身体の動きを阻害しないようなものを選ぶ。

結果、夏季であればホット・パンツ、冬季にはゆったりとしたバギー・パンツを使用する。

二人とも、皮の装備はショート・ブーツ、ベルト・ホルスター、膝当て、肘当て、胸当て程度。

シャアリィは、胸当てさえも使用しない。


男性の冒険者が好んで着込むような、挟み込みの合板皮鎧、金属プレート入りの膝丈ブーツは使わない。

防御性能よりも、軽さを重視。

即ち、機動力こそが二人の戦術の要である。


・・・


「魔石採取だね」


アイシャがシャアリィに確認する。

シャアリィは頷き、


「やっぱ、乱獲なら親指かな・・・」


と、行先の迷宮を指定した。

気が進まない等とは言ってはいられない。

今、必要なのは『量』であり、『質』は問わない。

ザグレブホーンで経験した氷結耐性獲得という遠い目標に比べれば、たかだか二千や三千の魔石採集なのだから、一週間で事足りる。


好みの術式が手に入らなければ、さらに一週間。

今回の狩りは、全てがシャアリィの血肉となる。

シャアリィの頭の中にあるのは、フローズン・ドラゴンだけではなくなった。

それは、リーシャとの決戦に備えるという意味。

今はまだ付け焼刃でも、いずれ、射程に捉えておかねばならない相手、受難の聖女。

時間は有限、のんびりしてはいられない。


勿論、最終目的以前に、二人が為さねばならないのは、


『巨人の骸』

『廃棄の王』


と、いう二つのネームドの攻略。

そのためにもシャアリィの術式追加は重要事項。


真夏でないだけ、多少はマシだ。

多少なりとも湿度が下がり、シャアリィの苦手な腐臭もわずかばかり落ち着いている。


押し寄せるゾンビィ、スケルトンの群れ。

骨を叩き、腐肉を撒き散らし、魔石を拾う、ただのルーティン・ワーク。


シャアリィが腐臭に限界を感じれば、通路を塞いで地上で休憩。

一息いれたら、また潜り、繰り返す。

僅かな楽しみは、時折、骨に交じって転がる装飾品の類。

二つ拾えば金貨一枚。

五つ、六つ見つければ、庶民の一月分の家計にもなる。

拾える確率は低いものの、百も叩けば一つくらいは手に入る。


一日、四百個の魔石を集める、単純作業の繰り返しの日々。

二日、三日、四日、五日、六日・・・。


真面目な労働者の気分になる。


「そろそろいいかな」


集めた魔石を五百個毎に詰めた木箱が六を越え、地下室が少々狭くなった。

これが一回分なのか、それとも、二回分になるのかはわからないが、シャアリィの術式追加の準備は整った。


後は、運次第。


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