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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
282/395

左耳の迷宮のキメラ

翌日。

フランコが機嫌よく、シャアリィとアイシャに『お願い事』を話す。


「シャアリィのお遣いのついでに、大教会で許可を貰ってきたんだ」

「左耳のほうも、私が狩って差し支えないか、とね」

「さすがに両方の融合個体を独占するのは気が咎めてね」

「上司たる、クリムゾン・アレクサンドル卿にお伺いを立てた」

「前回の贈答の甲斐もあって、『構わない』と」

「ああ、アレクサンドル卿は、二人にとても興味を示していたよ」

「機会があれば、遊びに来い、との、ことだ」


わかりきっていたことだ。

フランコの元に身を寄せる以上、多分、こうなる、と。


「当然、フランコも同行してくれるでしょ?」

「右耳の時みたいに直通路で」

「私、本当に、あの迷宮を歩くの嫌なんだから!」


シャアリィが半分怒りながら、フランコに訴えた。

フランコは快く、勿論だともと返し、アイシャは注意点について説明を求めた。


「右耳と同じようなやつなら、私達の敵ではないが」

「何か変わった所はあるの?」


飄々とした笑みを浮かべたまま、フランコは、


「左耳は、アラクネの亜種のような奴さ」

「世にも奇妙な男性型のアラクネの背から、四匹の毒蛇が生えている」

「勿論、アラクネ同様に術式も使う」

「まぁ、術式に関しては中級までの水属性だから、シャアリィの敵ではないな」

「知っての通り、厄介なのはスパイダー・ブレス」

「強靭な粘着性の液体・・・奴らの巣の材料」

「食らったり、踏んだりすると大変なことになる」

「そうそう、勿論、やつもゾンビィだから、基本は切り落とし戦術が有効だよ」


シャアリィとアイシャは揃ってげんなり。


「まぁ、アイシャの新スキルの相手にはちょうどいいかもね」

「そういえば、ティアラはどうやって使うの?」

「まさか、頭に乗っけとくわけにも行かないでしょう?」


アイシャからティアラを受け取ったフランコが、自身の手首にそれを通す。

輪には伸縮性があり、フランコの大きな掌でも問題なく装着出来た。


「こうやって、手首とか足首に通しておくだけでいいさ」

「あとは、適当なキーワードで発動を宣言すればいい」

「サモン・スキルだから、ピクシーの被弾には要注意」

「術式発動後、ピクシーが消えるまでに死亡したら、また、バンシィを補充しなきゃならなくなるからな」


・・・


地下室に積み上げた暗影属性の魔石は、まだ五百個程度。

タウロスのものも含まれているとは言え、シャアリィのスキル取得には、全然足りない。


それを横目にしながら、アイシャがバンシィ・プリンセスの魔石の術式開封を行う。

記憶に刻まれる、術式発動の詠唱句。

さすがに地下室では試し撃ちも出来ず、階段を上り、適当な場所を選ぶ。


「ちょっと、墓地で試し撃ちしてみるよ」

「墓石は壊さないから安心して」


アイシャの声を聴いたシャアリィが、


「私も行くー」


と、二人連れだって静かな墓地の隅に出た。


「私がアイス・ウォールを出すから、そこに撃ってみれば?」

「風雷属性の術式は効果が見えにくいからねー」


アイシャはシャアリィの提案に頷いて、詠唱の準備をする。


「いっくよー」

「凍れ!」


高さ二メートル弱、幅五メートル、厚さ一メートル程の氷の壁が出現する。


「束ねし力、四門を巡れ、碧き波動、我が手に宿れ、解き放て、風の礫」

「ウインド・ブラスト」


アイシャの放ったウインド・ブラストは、アイス・ウォールを破壊する。

全てを砕くには幅は若干足りないが、その軌道は発動地点から放射状に延びる。

シャアリィのアイス・ブラスト同様に、距離によって威力が減衰するのだろう。


検証の結果・・・

有効射程は五メートル前後、射角範囲四十五度程度ということが分かった。

中距離範囲攻撃は、アイシャにとって、使い勝手の良い術式だ。

ヘイトを持たないアイシャが、シャアリィからターゲット奪うのに適しているだけでなく、会敵時の先制攻撃にも役立つ。

さらに至近距離で使えば、相応の威力も期待出来る。


シャアリィを仮想敵とした、サモン・ピクシーも試した。


「なんか、いらっとする詩、聞かされてんだけど」

「おっと、頭がぐわんぐわんする・・・」

「むぅ・・・」


「解けろ!」


思わずシャアリィは、デコンポーズを使う。


「ふぅ・・・馬車酔いみたいだね・・・うぷっ」

「直接脳を揺らされる感じ」

「結構、効くんじゃないかな、コレ」

「まぁ、ゾンビィちゃん達は、脳みそ溶けてるから、多分、平気なんだろうねぇ」


アイシャのウインド・ブラストで、墓石の隅が欠けたのは内緒だ。


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