遺産の鑑定
アイシャはシャアリィの意図がわからない。
勿論、本来の目的と消去法で考えれば、『巨人の骸』を選ばざるを得ない。
そこまでは理解できるが、二つ目のネームドをも選択する理由がわからない。
「シャアリィ、『巨人の骸』は仕方ないとしても、どうして『廃棄の王』まで手を出す必要があるの?」
「今の私達の手には余る・・・と、私は思う」
シャアリィは涼しい顔で、アイシャの言葉尻を捉える。
「『今の私達』には、ね」
「アイシャに内緒でフランコに頼んでおいたことがあるんだよ」
「だって、アイシャ、バンシィは嫌いでしょ?」
頭に疑問符を浮かべるアイシャに、シャアリィが告げる。
「夕方、フランコが戻ったら種明かしするよ」
「結果が出る前から、糠喜びさせたくないんだ」
それは、シャアリィに秘策があるということなのだろう。
「わかった」
「ほんの数時間だけれど、どんな仕掛けか楽しみにしておくね」
アイシャは、プレゼントの中身を見るのを我慢する少女の気持ちになる。
・・・
フランコはシャアリィの言う通り、珍しく外出中のようだ。
何時もならば、この時間には教会の務めを終えて戻って来るはずだが、少々、帰りが遅い。
「ちょっと、フランコの帰り遅くない?」
アイシャが、そわそわとする傍ら、シャアリィはクッキーを齧りながら、
「まぁ、そのうち帰って来るよ」
「先に夕食、食べちゃいましょう」
「フランコを待ってたら、クッキーでお腹が膨れちゃう」
それもそうね、と、アイシャがキッチンに立ち、パスタを茹で始めた。
・・・
「ただいまー、いやぁ、遅くなった」
午後九時を過ぎ、フランコが帰宅すると、アイシャは足早に玄関に向かう。
「遅いから、心配していたよ」
その言葉にフランコは、
「あれ?シャアリィから聞いてなかったのか?」
と、怪訝な顔をした。
アイシャは、少しむくれて、
「教えてくれないんだ・・・戻ったらわかるって」
成程、と、応接室の扉を開けるとシャアリィがくつろぎながら、
「おかえり、まずは、お酒ね?」
「今日は、ウイスキーを用意しています」
テーブルの上に、小さなショットグラスが一つ、タンブラーが二つ。
氷結の魔石で冷やした水のボトルもある。
「準備万端だね」
「じゃあ、早速、知らせるとしよう」
そう言って、同じテーブルに、一つの魔石と、あのティアラを置いた。
アイシャは、それを見て、ひっと小さな悲鳴を上げる。
「シャアリィの見立て通り、術式が封印されていたよ」
と、魔石を手に取ってフランコが驚くべきことを知らせた。
「ウインド・ブラスト・・・風雷の中級術式だね」
それと、こっちの封印スキルも判明した。
「サモン・ピクシーだ・・・使用者に敵対する相手に歩行阻害のデバフを与える」
アイシャは、全てを把握した。
それが自分の戦力増強になるキーアイテムだということを。
「ちょっと嫌かも知れないけれど、プレゼントだよ」
シャアリィが楽し気に、アイシャに二つを手渡す。
「あとは、もう少し、暗影の魔石を手に入れて、私のスキル取得」
「少々、運任せではあるけれど、まずは一歩前進」
「鑑定費用は、フランコに支払ってあげてね?」
フランコが首を振って、いらないと示す。
「二人へのお願い事を一つ、それでチャラにしよう」
何処までも抜け目のないフランコだった。




