正面突破
昨晩は結構な酒を飲み、熟睡というものを久々に味わうことが出来たシャアリィとアイシャは、食材の残りでフランコの昼食を作った後、冒険者ギルドに向かう。
ジョンソンの身の上話を聞き、彼の評価は変わったが、それでも駆け引きをする相手という状況はそのままだ。
遠くから輪唱のように鳴り響く教会の鐘。
正午丁度、開け放しの扉を跨ぎ、シャアリィとアイシャはアイリーンと向かい合う。
「時間丁度ね」
「今日は、なんだか上機嫌のようだけれど、良いことでもあったの?」
アイリーンの問いに、シャアリィが答える。
「美味しい食事と酒、柔らかなベッド」
「それがあれば世は事も無し、そんな感じよ」
意味不明な返答に少しだけ眉根を寄せて、アイリーンがジョンソンを呼ぶ。
「まぁ、いいわ」
「マスター、客人よ」
今日はジョンソンも機嫌がいいらしい。
「よう、キラーズ、待ってたぜ」
「ご所望のカード、これでどうだ?」
惜しげもなく表向きに置かれたカードは、
「named:廃棄の王」
「討伐報酬:金貨五百五十枚」
このカードこそがジョンソンの本命。
まだ手の内を隠していたことに、シャアリィとアイシャは揃って瞠目する。
「まさか・・・二つ目のネームドとはな」
「随分と報酬が高いようだが・・・」
「間違いではないか?」
それが正当な評価であれば、間違いなく龍種をも凌ぐ強さ。
龍種が何故ネームドに指定されないかと言えば、討伐者の数をある程度集めれば必ず倒せるという推測が成り立つが故のこと。
だが、ネームドは、数の不利を覆せる程の特殊な性質を持っている。
『千本足』のような、巨大な質量。
『彫像』のような無双の戦闘技術。
ジョンソンがその情報を開示する。
「そいつは、マーヴェリックの試作品らしいぜ」
「精霊四属性全ての術式使いだから、レベル百程度の冒険者じゃ歯が立たない」
「おまけに切り刻んで魔力を使わせるにしても、魔力を使わない自立再生」
「結局、人差し指の迷宮の幽閉区画に封印しておくしかない」
「まぁ、手を出さないことを推奨するよ」
「くくく、要望には応えたぜ」
アイシャは、沈黙する。
だが、シャアリィはそうではない。
「アイシャ、私がカード選んでもいい?」
お手上げのアイシャは、シャアリィに選択を委ねた。
「私ならね、オードブルに巨人の骸、メインディッシュは廃棄の王」
「迷わず、ネームド連戦を所望するよ!」
シャアリィの金色の瞳が妖しく光る。
「お望み通り、全部喰らい尽くしてあげるわ」
「あなたの人生設計なんて、知ったことじゃない」
さすがのジョンソンも、シャアリィの豪胆に一歩、後退る。
一筋の汗を眉間に流した後、
「へへへ、本物かと思ってたが、イカれたほうだったか」
そして、何時ものにやけ笑いを取り戻し、
「報告、楽しみにしてるぜ」
そう言い残して、奥の扉に消えた。




