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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
276/395

夜明け前の帰路と討伐報告

結局、フランコの見せ場は来なかった。

シャアリィの期待していたようなフランコの弱みも当然、露見しない。

だが、当のフランコは、初めて目の当たりにするシャアリィの狩りに戦慄した。


「あの厄介なバンシィを嫌がりもせず駆逐・・・か」

「あの時、判断を誤らなくて本当に良かったよ」


心の声がフランコの口から洩れた。


こんな街にいれば、聖職者であろうと悪事に加担することもある。

特に出世を懸けた身であれば、その弱みに付け込んで手伝いを強要されることもあるだろう。

フランコ自身、セブール商会との関係には気を遣う。

エレナとナッチェの一件に関しても、セブール商会自体が絡んでいたならばシャアリィ、アイシャと敵対せざるを得ない状況に追い込まれていただろう。


このグリーンノウズという街を塗り分ける三つの色は、教会、セブール、領主。

それらは互いに協調することで共存共栄しているのだ。

フランコも教会に属してこの街にいる以上、その縛りからは逃れられない。


「ん?私だって、嫌だよ?うるさいし」

「ただ、アイシャが頑張れない時だってあるじゃない?」

「そういう時は、私が頑張らなくちゃねー」


シャアリィは、にこにこしながら通常運転。

アイシャは、バンシィの『死の詩』の余韻が残っているらしく、まだ、顔色が悪い。

それでも健気に最後まで、魔石拾いをしていたのだから、さすがはセロニアスだ。


「このティアラ、高く売れるのかなぁ」


シャアリィがポケットから取り出したティアラに、アイシャが腰を抜かしそうになる。


「ちょ、ちょっと、それ・・・」

「呪いとかあるんじゃない?」

「・・・うう、捨てろといいたい所だけど、討伐達成のアイテムかもだし」

「兎に角、こっちに見せないで」


本気で嫌がるアイシャの顔を見れば、大人しく引っ込めるしかない。


これでタウロスと同じ討伐報酬なら、シャアリィには楽な仕事だった。

見えない死の危険が溢れる迷宮のほうが、シャアリィには余程、恐ろしい。

二人共が苦手なクエストに当たっていないのは良い傾向なのだろう。

それはお互いが短所を埋め合わせるだけの能力を持っているという証拠であり、ペアとしての相性が良いということを示している。


フランコ邸に戻った三人は、眠れなかった夜を埋め合わせるべく、すぐにベッドに潜った。


・・・


正午を知らせる鐘の音が大きく響き渡る。

フランコは面倒くさがって自分の教会の鐘を鳴らすことは滅多にない。

今、聞こえてくるのは、他の隣接教会と大教会からのものだ。

教会が多い土地柄、これを聞かされれば最早起きるしかない。


アイシャは、まだ寝足りないシャアリィを起こして、冒険者ギルドに向かうことにした。


「あら、いらっしゃい」

「順調に進んでるようね?」


アイリーンの呼び掛けにアイシャが答える。


「姪っ子、昨日もいなかったけれど週休二日なの?」

「彼氏とデートとかしてたり?」

「こっちは順調、今日も報告」

「叔父さんを呼んで来て」


ギルドマスターとの関係を知られていたことにアイリーンが大きな舌打ちをする。


「ちっ!マスター!」

「琥珀と白銀がきたよー」

「てか、コネ就職バラすなし!」


シャアリィがにやにや笑いながら、


「コネっこも大変ね」


と、アイリーンに冗談を飛ばす。


「混ぜんな、コネっていうな、姪っ子っていうな」


涙目でむくれるアイリーン。

その背後から、寝起きらしいジョンソンが姿を現す。


「バンシィ討伐の報告だろ」

「土産物は持ってきたか?」


ジョンソンの言う、土産物とは間違いなくティアラだろう。

シャアリィが魔石清算に使うプレートの上に、宝石付きの小さなティアラを置く。


「上出来だ、討伐完了を認める」

「金を持ってくるよ」

「面倒だから、追加のカードも」

「これ、書いといてくれ」


依頼内容:落日の教会墓地内、バンシィ殲滅

討伐報酬:金貨五十枚

完遂署名:シャアリィ・スノウ


嬉しそうに金貨を数えるジョンソン、腹立たしい顔で見守るアイシャ。

半ば諦めた気持ちで開かれるカード。


――― そのカードは、


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