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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
275/395

バンシィ・プリンセス

串刺しにされ、穴を穿たれ、身体を抉られる度、バンシィは悲鳴を上げた。


「うるさいなぁ・・・もうっ!」


シャアリィにしてみれば、赤ん坊の泣声と大差ない程度にしか感じない。

それもそのはず、シャアリィは陰根源転換術師(ネクロマンサー)だ。

元からの危機感欠落に圧倒的な暗影耐性が相乗すれば、バンシィの叫びですらただの騒音。


悪霊たちの悪足掻きの衝撃波はシャアリィのジャミングによって全て封殺される。

バンシィにとって、これ程最悪の相手はいない。

それでも尚、野蛮な侵入者を撃退しようと、次々とシャアリィに群がってゆく。


さすがのシャアリィにも、魔力には限界があり、攻守でそれを使っているのだから、消耗を強いられる。


「アイシャ、例の奴やるから、少しの間防御お願い」


呆けたり、耳を塞いだりしていたアイシャも我に返り、三節棍を手に持ってシャアリィの元に奔る。


「わかった、この数なら衝撃波も相殺できる」

「終わったら合図を!」


単独で浮いているバンシィを見つけ、シャアリィがサンド・プリズンを展開する。


「吸い尽くせ!」


最早、どちらが悪霊だか、わかったものではない。


・・・


残りは、あと僅か・・・アイシャがそう思った時、


『詩』が聞こえた。


アイシャの耳に届く、その詩は・・・

哀しく、心を揺さぶり、知らぬ間に眼から涙が溢れる。

身体が震え、脚が竦み、酷い眩暈に倒れそうになる。


『愛した・・・信じた・・・祈った・・・』

『誰のために?・・・私は報われなかった・・・』

『名を奪われ・・・埋められ・・・呪った』

『誰を・・・私以外の全て』


月のない墓地の中央に顕現したのは、バンシィ・・・だが、それはあまりにも美しい。

頭上には小さな宝石の(ティアラ)・・・まるで高貴な者が身に着ける装飾品。

他のバンシィとは全く異なる、赤い髪と白い肌、ただ、その瞳は血のように赤い。

開いた唇から、何度も繰り返し、同じ詩が紡がれる。


焦点が合わない瞳がアイシャを捉えた瞬間、美しい顔が憎悪に歪む。


――― 憎い!


一瞬で間合いを詰め、アイシャの肩に鋭い爪を浴びせる。

三節棍を束ね、辛くも爪の斬撃から逃れたアイシャが、膝を地に落とす。


シャアリィがアイシャの肩越しから、


「飛べ!ふたつ、みっつ、廻れ!」


バレット三連撃を軌道に乗せたストーン・サークルを撃ち、アイシャを窮地から救う。

それだけに留まらず、さらにアイス・ブラストの弾幕を叩き込む。


――― 私を愛して!


無数の風の槍がシャアリィを襲うが、術式はシャアリィには届かない。


――― 死ね、死ね、死ね、お前も死ねぇ!


それは聞く者全てを恐怖させ絶望させる絶叫・・・だが、シャアリィだけは怯まない。


「お前が死ねぇ!」


シャアリィのワンドが、狙いを定める。


「穿て!」


バンシィ・プリンセスの真下からアース・ランスが突き上げた。

それは悪霊の身体を見事に貫く浄化の一撃。

亡骸は霧散し消え失せ、ティアラだけが残される。


「アイシャ、もうちょっとだけ、頑張って」


シャアリィの言葉に頷いて、アイシャは僅かに残るバンシィの殲滅に向かう。

シャアリィはティアラを拾い、星明りに翳して呟いた。


「これで、いいんでしょ、お姫様」


――― バンシィ殲滅完了。


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