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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
271/399

人形師の謎

夕暮れ、シャアリィとアイシャは、買い込んだ食料と山程の暗影魔石を抱えて、十六番教会に戻る。

かつてエレナとナッチェが住んでいた家に灯りはなく、そこがまだ空き家だということを横目で確認しつつ、迷宮に潜むという人形師について、各々が考えを巡らした。

旧市街地では、落日後の表での会話が憚られることあり、シャアリィとアイシャの間にはただぽっかりと無言の時間だけがあった。


フランコ邸宅の予備の鍵。

二人に預けられたそれは、フランコからの信頼の証だ。

鍵を開け、邸宅の中に入ると、シャアリィが帰宅を知らせる。


「ただいまー、フランコいるー?」


最近、普段着を見慣れていたフランコが、聖衣であることに少し笑いがこみ上げる。


「ああ、おかえり、上首尾に運んだようだね」

「つい、さっき教会関係者と会ってね、長年放ったらかしの依頼が片付いたと喜んでいたよ」


シャアリィが、自分の笑いの理由を話すべく、フランコに、


「今日はちゃんと神父なんだね」


等と酷いことを言う。


少しばかりは自覚があるのか、フランコも、


「今日は葬儀があったのさ、葬儀の後は説法、懺悔・・・それに会合」

「私は効率主義でね、仕事があった日には、出来る仕事をまとめてやることにしてるんだ」

「そうしないと、ゆっくり本を読みながら酒を飲めないだろう?」


全然、ちゃんとしていないと、アイシャは呆れる。


「次のカードは、『人形師』に決めた」

「もし、時間が許すならば、飲みながらで構わないから、知恵を貸して貰えないか」

「酒のつまみくらいは、私が用意する」


アイシャが食材の山を見せて、フランコに協力を求めた。

フランコは、ちょうど小腹が空いていた所だと、快くアイシャの求めに応じた。


・・・


応接室のテーブルに、ワインのボトルとグラス、ソーダの瓶、チーズ、野菜スティック、ハム、クラッカー、そして考察を纏めるための紙、シャアリィのメモ書きが並ぶ。


「こういうのを見ると、私もそろそろ嫁を貰うべきかと心が揺れるね」


フランコにしてみれば他愛もない冗談だったが、シャアリィが敏感に反応する。


「アイシャはダメだよ!」


わかったわかったと、フランコは両手を挙げて降参の姿勢。


「で、何が知りたい?」

「と、問う必要もなく、人形師の居所について考えればいいんだろう?」


アイシャは、無言で肯定の眼差しで答える。

シャアリィが、前のめりになって、


「フランコはもう心当たりあるの?」


と、詰めよれば、フランコは掌を立てて左右に振り、否定する。


「まぁ、私が知っている情報を提供しよう」

「本名はわからない。だが、元々はクラーケンの用心棒の一人だったようだ」

「その頃に起きた事件の主犯が人形師だと言われている」

「『衛兵殺し』だ」

「アーシアン連合国では、司法取引不可の死罪確定」

「場合によってはセブール商会にも査察が入りかねない」

「まぁ、使用者責任という奴だね」

「だが、ここはグリーンノウズ・・・セブール商会が賞金首の懸賞金を支払うことで教会査察を免れたんだ」

「不可解な点と言えば、何故、人形師はグリーンノウズを出て行かないかということ」

「海路で逃げることは不可能でも、中継点の街まで辿り着けばキャラバンに潜りこめるじゃないか」


フランコは酒を煽り、続ける。


「つまり、彼には此処に遣り残したことがあり、その機会を待っている」

「それ以外に辻褄の会う答えがない」

「そして、少なからず、彼にはゾンビィ以外にも協力者がいるだろうな」

「人間は弱いイキモノで、三日水がなきゃあ脱水で死ぬんだ」

「シャアリィみたいに、水属性持ちで簡単に汚染されてない水を集められるわけじゃあない」

「そうすれば、最低でも週に一度くらいは水の補給をしなきゃならん」

「衣食住に関して言えば、ゾンビィは全く役に立たない」


「最初のうちは血眼になっていたセブールの連中も、今じゃ、忘れたように放ったらかし」

「だが、未だに人形師の仕業と思われる強盗は続いている」

「もしかしたら、人形師は既に死んでいて、協力者だけが残ってる、ということもあり得る」

「そして、人形師の幻影を盾に、強盗稼業を続けている・・・なんて、ことも考えられるよ」


シャアリィは話を聞いた後、鍵となる言葉だけを並べる。


「セブール商会、衛兵殺し、死罪確定、懸賞金」

「遣り残し、協力者、強盗稼業」


シャアリィはどう考えても・・・と、前置きして。


「どうして、それで迷宮に潜んで暮らしてる、と言えるのかな?」

「人形師がゾンビィに食われない特性を持っていて、発見に至ってないという状況?」

「私は、普通にこの街で暮らしてるんじゃないかって・・・」

「そんな気がする」


フランコは、シャアリィの言葉を否定すべく、根拠を探す。


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