追加カード
「追加にはこれを指定するよ」
ジョンソンがバインダーからカードを取り出す。
前以て決めていたであろうカードは、
「討伐依頼:賞金首『宝石荒らし』の確保、或いは殺害」
「討伐報酬:dead金貨五枚、alive金貨五十枚」
ごく普通の賞金首、衛兵所にも出回ってそうな依頼。
シャアリィとアイシャは首を傾げる。
「賞金首だから、当然、窃盗だけじゃなくて殺人犯なんでしょ?」
「金額からして、相当のモノを盗んだことは想像できるけれど・・・」
「私達が狩るには、少々、小物過ぎない?」
「衛兵所にだって、これくらいの手配書は出回っているでしょ?」
シャアリィはカードを見て、苦笑い。
ジョンソンも何時ものにやけ顔で応じる。
「こいつぁ、個人的な怨恨で賞金額が上乗せされてるんだよ」
「生かして捕まえたなら、報酬は十倍」
「拷問でブツの在処を吐かせた上で、また拷問・・・末路は明るくはないな」
シャアリィがメモを取る横で、アイシャが嫌な顔をする。
「相変わらずろくでなしばっかり、だな」
「それを飯の種にする私達も人のことを言えた義理ではない、けど」
「この賞金首は、衛兵所関連には出回ってないのか?」
「もし、出回ってるなら、私達は衛兵所の依頼をこなす」
「そうすれば、あんたに支払う手数料がいらなくなるからな」
ジョンソンは失笑交じりにアイシャに問う。
「さすがキラーズ、抜け目がないな」
「別にそれでもいい」
「ただ、その時は、俺はこのカードを遂行と認めない」
「つまりは、お前達の選択肢が五択から、四択に狭くなるだけさ」
「それでいいなら、衛兵所に突き出すがいいさ」
ここに至って、アイシャはジョンソンの狡猾さに気付く。
「そうなれば、危険度の高い仕事や、私達にとって好まざる仕事しか残らない可能性が高くなる、そういうことだな」
「何処までも腹黒い奴め」
「否、巧いことを考えたと、褒めておこうか」
違和感。
シャアリィは、ジョンソンのカード選びに悪意を感じ取る。
だが、それはまだ直感がそう告げているに過ぎず、具体的に、何がどのようにおかしいのかは、全くわからない。
顎に指をあて考えてみても、シャアリィには、アイシャ程の知識も、フランコ程の情報もなく、その違和感の正体に辿り着けない。
「次の討伐依頼は決まってるのか?」
急かすようにジョンソンに問われれば、アイシャは先の見えない流れを変えるべく、難度の高いカードを選択する。
「人形師、を、やる」
賞金首としては、ほぼ最高ランクの金貨三百枚(三千万円)は、ネームドと同じくらい遂行が難しいことを意味している。
カードの選択肢の増減、ジョンソンの次のカード指定、そういうものを計算に入れなくとも、ここで一番難しい討伐を遂行出来れば、駆け引きに余裕も生まれるだろう。
曖昧ながら、アイシャの勘が囁いている。
もっとも選び辛いカードこそが正解だと。
アイシャの選択に、ジョンソンは瞠目する。
「おい、本当に人形師をこんなに早い巡目でやるつもりか」
アイシャはさらりと首肯を返し、ジョンソンに問う、
「面倒そうだったら、別に完遂しなくとも、残りカードに切り替えるさ」
「それに、追加カードを要求しないなら、同時進行ってのも問題なかろう?」
こちらにはフランコがいる。
情報戦では、ジョンソンの知らないアドバンテージだ。
「流石、キラーズ」
「その心意気や良し、ってか」
「まぁ、俺の為にも頑張ってくれ」
僅かに吊り上がった口角、それは紛れもない謀略の表情。




