唯一の協力者
旧市街を通り、シャアリィとアイシャが向かうのは、あの教会。
正式には西方第十六番教会。
フランコ神父ことジョルジアット・フランシスコ司教の職場兼自宅。
ここでのフランコは、司教という地位を表に出さず、平穏な暮らしをしている。
一見、出世争いに無頓着と思われるような振る舞いながら、現状、大司教昇進の最右翼。
それを決定付けたのが、シャアリィとアイシャと共に倒した融合個体の魔石。
強力な術式は、教会での出世競争において重要な指標となる。
それが秘められた魔石を枢機卿に贈れば、当然のように顔覚えも良くなる。
教会の序列は、バトルロワイヤルのように混戦を勝ち抜くようなものでなく、トーナメント戦のように一つ、一つ、勝ち上がって位階を得る。
過去の教皇や枢機卿、聖人に連なるような血筋であれば、それだけで一回戦勝ち抜け。
周囲を引き離した位置からスタート出来る。
そうでなければ、ロザリーやフランコのように、若くして司教になることは難しい。
・・・
礼拝堂の扉を開け、シャアリィが呼びかけると、
フランコのバー・カウンターと化した懺悔室の扉が開く。
エレナとナッチェを手放して以来、掃除らしい掃除をしていないのか、随分と埃っぽい。
「やぁ、二人とも、よく来たね」
「よっこいしょっと、適当な席に座るといい」
そうは言うものの、フランコの視線の先にあるのは、信徒席。
シャアリィは気にも留めず横並びの椅子の一つに座るが、アイシャはちょっと気遅れした。
「飲んでるのか?まだ、陽は高いぞ?」
一言文句を付けてから、シャアリィの背凭れの後ろに、腰を下ろす。
「随分と遠くまで遠征したね、ザグレブホーンとは、又」
「ロザリー・イグシエンヌと会っただろう?」
「『三日月』だっけ、アレの魔石、ベネディクトが欲しがってたからな」
「まぁ、ここじゃなんだ、どうせ信徒なんて今日はこない」
「邸宅のほうに行こうか」
三人は教会裏手のフランコの邸宅に向かった。
・・・
「そういや、手紙とチョコレート、ありがとう」
「教会関係者以外から手紙なんて初めて貰ったよ」
「チョコレートも、そのへんじゃ買えない上等なもので美味かった」
「アレは甘味のくせに酒が進む、悪魔の食べ物だ」
満足げにフランコは感想を述べた。
「で、私達は、ここに滞在してもいいの?」
と、シャアリィが問うと、フランコは穏やかな顔で答える。
「断る理由、ないだろ?」
「条件次第じゃ手伝いまでしてくれるって言うんだ」
「むしろ、喜んで、さ」
アイシャが呆れた視線で、フランコの胸元を見る。
確かにぶらさがっている銀枠純金十字。
「今日、着いたばかりでね」
「まだ、食料の買い込みも何もしていないんだ」
「今日は、再会と情報交換を兼ねて繁華街に行かないか」
「シャアリィが刺身の味を覚えてしまったから、そういうものが出せる店」
「フランコなら心当たりあるだろう?」
アイシャの提案にフランコが笑う。
「港町育ちは、魚食い飽きてるんだがね」
「まぁ、来客をもてなすなら、仕方ないか」
「商業ギルド周辺なら、高級店も多い」
「だが、ここはグリーンノウズ、値段もそれなりだぜ?」
二人は荷物を置き、フランコは普段着に着替える。
アイシャはロザリーのことを思い出す。
この罰当たりな司教のように、少しくらい人生を楽しめば良いのに、と。




