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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
261/404

唯一の協力者

旧市街を通り、シャアリィとアイシャが向かうのは、あの教会。

正式には西方第十六番教会。

フランコ神父ことジョルジアット・フランシスコ司教の職場兼自宅。


ここでのフランコは、司教という地位を表に出さず、平穏な暮らしをしている。

一見、出世争いに無頓着と思われるような振る舞いながら、現状、大司教昇進の最右翼。

それを決定付けたのが、シャアリィとアイシャと共に倒した融合個体(キメラ)の魔石。


強力な術式は、教会での出世競争において重要な指標となる。

それが秘められた魔石を枢機卿に贈れば、当然のように顔覚えも良くなる。

教会の序列は、バトルロワイヤルのように混戦を勝ち抜くようなものでなく、トーナメント戦のように一つ、一つ、勝ち上がって位階を得る。


過去の教皇や枢機卿、聖人に連なるような血筋であれば、それだけで一回戦勝ち抜け。

周囲を引き離した位置からスタート出来る。

そうでなければ、ロザリーやフランコのように、若くして司教になることは難しい。


・・・


礼拝堂の扉を開け、シャアリィが呼びかけると、

フランコのバー・カウンターと化した懺悔室の扉が開く。

エレナとナッチェを手放して以来、掃除らしい掃除をしていないのか、随分と埃っぽい。


「やぁ、二人とも、よく来たね」

「よっこいしょっと、適当な席に座るといい」


そうは言うものの、フランコの視線の先にあるのは、信徒席。

シャアリィは気にも留めず横並びの椅子の一つに座るが、アイシャはちょっと気遅れした。


「飲んでるのか?まだ、陽は高いぞ?」


一言文句を付けてから、シャアリィの背凭れの後ろに、腰を下ろす。


「随分と遠くまで遠征したね、ザグレブホーンとは、又」

「ロザリー・イグシエンヌと会っただろう?」

「『三日月』だっけ、アレの魔石、ベネディクトが欲しがってたからな」

「まぁ、ここじゃなんだ、どうせ信徒なんて今日はこない」

「邸宅のほうに行こうか」


三人は教会裏手のフランコの邸宅に向かった。


・・・


「そういや、手紙とチョコレート、ありがとう」

「教会関係者以外から手紙なんて初めて貰ったよ」

「チョコレートも、そのへんじゃ買えない上等なもので美味かった」

「アレは甘味のくせに酒が進む、悪魔の食べ物だ」


満足げにフランコは感想を述べた。


「で、私達は、ここに滞在してもいいの?」


と、シャアリィが問うと、フランコは穏やかな顔で答える。


「断る理由、ないだろ?」

「条件次第じゃ手伝いまでしてくれるって言うんだ」

「むしろ、喜んで、さ」


アイシャが呆れた視線で、フランコの胸元を見る。

確かにぶらさがっている銀枠純金十字。


「今日、着いたばかりでね」

「まだ、食料の買い込みも何もしていないんだ」

「今日は、再会と情報交換を兼ねて繁華街に行かないか」

「シャアリィが刺身の味を覚えてしまったから、そういうものが出せる店」

「フランコなら心当たりあるだろう?」


アイシャの提案にフランコが笑う。


「港町育ちは、魚食い飽きてるんだがね」

「まぁ、来客をもてなすなら、仕方ないか」

「商業ギルド周辺なら、高級店も多い」

「だが、ここはグリーンノウズ、値段もそれなりだぜ?」


二人は荷物を置き、フランコは普段着に着替える。

アイシャはロザリーのことを思い出す。


この罰当たりな司教のように、少しくらい人生を楽しめば良いのに、と。


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