交渉成立
アイシャがジョンソンの意図を確認する。
「それを何故、私達に見せても構わないと思ったんだ?」
「私達がその情報を手にすれば、ギルマスの恐れることが起きるやも、だぞ」
「私とシャアリィが根こそぎ喰らい尽くすことになる」
ジョンソンはにやりと笑う。
「多分、そうなるだろうな」
「俺が知る範囲、お前達が、現存、最高峰に近いペアだろう」
「そこで取引だ」
ジョンソンは真昼間のギルドカウンターという場所をも気にせず、右手の人差し指と親指で輪を作る。
シャアリィは、つまらなそうに吐き捨てる。
「お金、ね」
「分け前の要求は何割?」
「あまりに法外な要求なら、教会に通報しちゃうよ?」
シャアリィとアイシャにとって、既に金銭というものは、それ程の価値はない。
二人の資産を合わせれば、慎ましい人生なら十回やり直せる。
アイシャは理解している。
ここでジョンソンの申し出を蹴れば、旨味のある魔物にありつくのは相当難航するのだから、もう、この商談はジョンソンの言い値でも応じる方が得策である、と。
だが、流石にそれでは虫唾が奔る。
「討伐報酬の三割、但し、魔石は全て私達が貰う」
「ネームドの魔石に関しては業腹だが、ギルドとの取り決め通り、権利の半分を渡す」
「その他、副次的な利益については魔物毎に交渉」
「私達が譲れるのは、そこまで・・・どうだ?」
アイシャは主導権をジョンソンに与えず、妥協できる線を引いた。
ジョンソンは一度、手を叩き、右手を差し出す。
「交渉成立」
「アイリーンへの口留め料は俺持ちで構わない」
「お互い他言無用だ」
「俺は老後の資金を貯めて、定年を待たずに仕事を辞められる」
「お前達は、金、経験値、魔石を手にして、世は事もなしってことさ」
じゃあ、と、ジョンソンは、バインダーをごつい手で開き、そこから五枚の伝票を取り出した。
「もう一つの俺の権利」
「伝票を指定する権利は俺が貰う」
「一つ消化する度に、新しいもの一枚を補充」
「常に選択肢は五つ、ほら、これが最初の五枚」
一枚目。
「named:巨人の骸」
「討伐報酬:金貨三百枚」
・・・最初の一枚から名有りか、いいものを持ってるじゃないか。
アイシャは、思わず口角を吊り上げる。
二枚目。
「討伐依頼:落日教会墓地のバンシィの殲滅
「討伐報酬:金貨五十枚」
三枚目。
「討伐依頼:右耳の迷宮から伸びる派生玄室にいるタウロス・ゾンビィ殲滅
「討伐報酬:金貨五十枚」
四枚目。
「討伐依頼:賞金首『人形師』の確保、或いは殺害」
「討伐報酬:dead金貨百枚、alive金貨三百枚」
五枚目。
「宝物回収:小指の迷宮内、力の指輪」
「討伐報酬:金貨五百枚、但し、指輪は依頼主に返却」
並んだカード、シャアリィが走り書きでメモを取る。
ペンを走らせる指が、実に楽しそうだ。
「今日は、持ち帰り、明日、どれから挑むか伝えるよ」
アイシャはひらひらと手を振り、シャアリィはメモを鞄に仕舞う。
やはり、ここはグリーンノウズ、一筋縄ではいかない。




