歴史の頁に
小さな勇者に先導され、楽団が通りに現れる。
整列し、観衆に頭を下げて討伐劇が始まった。
鳴り響くシンバルと共に歌劇役者による解説が加わる。
♪レリットランス開闢百年、この扉が開け放たれてから、幾人もの勇者が倒された。
♪そこにいるのは六本の腕を持つ恐ろしい魔物、スタチュー。
♪その手に持つのは、弓矢と剣盾、残る二本は拳が凶器。
♪エドワード、治癒を頼む、シャアリィは足止めだ。
♪マジック・ソードを掲げ、アイシャが部屋に踊りこむ。
♪任せろ、俺が二人を死なせはしない。
♪私が敵を凍らせるから、アイシャは必殺の一撃を!
・・・
所々、変更されてはいるものの、大筋、史実通り。
物語の終盤、観客は涙する。
♪お前の名前を聞いておきたい。
♪敗者に名乗る名などないさ。
♪楽しかったよ、アイシャ・セロニアス、シャアリィ・スノウ、エドワード・ルッツ。
♪スタチューは、敵ながら見事な最後を遂げて宝玉を残して消える。
♪傷ついたパーティ・メンバーに最後の魔力を振り絞ったエドワードのヒール。
♪神の加護に照らされた三人はこうして迷宮を踏破した。
・・・
シャアリィとアイシャは、少しばかり笑ってしまったが、この方がドラマティックで教会も面目が立ち、何より客受けがいい。
よく考えられた脚本は、シャアリィやアイシャの重要な情報に触れず、皆を楽しませるエンターテインメントとして、良く出来ていた。
何処から見ていたのか、領主アネモイが登場し、その護衛が、シャアリィ、アイシャ、エドワードの三人を見つけ、小さな英雄たちと並べる。
「こちらが、皆さんもご存じの迷宮踏破者三名です」
「如何でしたか?」
と、台本なしに水を向けられ、シャアリィが応じる。
「とってもよく作られていて、すっごく楽しい劇でした」
「小さな英雄さんたちも恰好良かったです」
観衆に愛想良く手を振る三名、その顔は少々引き攣っていた。
小さな英雄、楽団とインタヴューが続き、三人はファイヤー亭前に戻ってきた。
どうやら、アレックスもオルチェも劇を観覧したらしく、
「あんなすげえのと殺りあったんだな・・・改めて脱帽だぜ」
と、アレックスが言えば、オルチェも、
「居酒屋の女将で良かったよ」
と、真面目な顔で言う。
アイシャは思う。
これが毎年ここで伝統行事のように開かれるのかなと。
少しばかり英雄の気分になった。




