討伐劇と大繁盛
――― 収穫祭、それは春、夏を努めた者を労う祭り。
自然の実りに感謝し、召された者を偲び、神に祈りを捧げる。
季節の区切り、人生の節目、日々の中にある特別な一日。
・・・
大噴水の広場に、巨大な六本腕の魔物の藁人形が設置された。
それは、シャアリィ、アイシャ、エドワードが討伐した、『彫像』を模したもの。
この祭りの目玉とも言える、『討伐劇』に使われる。
台本の監修には、当事者のエドワードも関わったというこだわりの演目。
基礎学校に通う児童の中から、シャアリィ役、アイシャ役、エドワード役がオーディションで選ばれたというのだから、本格的だ。
しかし、まさか本人たちがそれを目にすることになるとは・・・。
シャアリィの術式を表沙汰にしないため、腕を順番に切り落とすという演出変更が為されており、エドワードの出番が、それに応じて増えている。
歴史というのは、こうやって都合よく修正されるのだ。
討伐劇は夜の八時から、始まるらしい。
・・・
午後五時。
商売上手な『黒猫のテラス』では、例の指定席がライトアップされた。
ファイヤー亭は、既にフル回転で串焼きを販売中。
「刺しても刺しても刺しても刺しても!!!」
「焼いても焼いても焼いても焼いても!!!」
アレックスが悲鳴を上げながら串焼きを焼き続け、黒猫たちは注文取りに追われ、オルチェは品出しで目を回している。
「手伝うよー」
シャアリィとアイシャという救世主の顕現に、皆が歓喜の声を上げた。
午後七時を過ぎた頃には、既に一週間分の売り上げがある為、アレックスが午後九時までの一時閉店を決め込んだ。
「黒みみ、黒みみ小、遊んでこい」
「小遣いだ、持ってけ」
「変なひとについてくなよ、あと、九時までには帰ってこいよ」
二人は元気に返事をして、エプロンを外し、露店の通りに駆け出してゆく。
「いやぁ、耳あり、耳なし、本当に助かったよ」
麦酒の木製ジョッキを四つ手に持ったアレックスが、オルチェ、シャアリィ、アイシャにひとつづつ渡す。
「来年の収穫祭には、臨時の従業員雇わなきゃ・・・アタシが死ぬ」
他の酒場も相当に大変な思いをしてるのだろうが、ファイヤー亭はエレナの発案で、串焼きと麦酒にメニューを絞ったことが大当たりした。
そろそろ討伐劇が始まるようだ。




