収穫祭
レリットランス到着から一夜明けて、冒険者ギルドに顔を出す。
シャアリィとアイシャの、『三日月』討伐は、既にギルドに届いていた。
「相変わらず派手にやってるらしいな、アイシャ、シャアリィ」
来賓室のテーブルで、ロートシルトが二人を出迎えた。
「もう、手当たり次第という感じだが、此処には生憎、お前たちの次の戦歴に加えるような魔物もいないからなぁ」
「そういえば、踏破記念治癒院には、もう顔を出したのか?」
アイシャが身振りを交えて答えた。
「すごいですね、アレ」
「建物もですが、何より仕組みがすごい」
ロートシルトは笑顔で説明する。
「ああ、アーシアンからきた新しい領主が考えたようだな」
「どうやればナセルバに人口が流出することを食い止められるか、と」
「この街は、北側と南側の中間点で大きな物流がある、迷宮都市から緩やかに商業都市へとシフトする計画なのだ、と」
「私も、自分が生きているうちに迷宮踏破が叶い、大きな責任を果たすことが出来た」
「もう、何時引退してもいいんだが、新たなギルドマスター候補が見つからなくてな」
シャアリィとアイシャには残念ながら、人選に叶うような知り合いはいない。
「街が騒がしいみたいですが、何か催しでも?」
シャアリィが問うと、ロートシルトが顎髭を梳きながら答える。
「収穫祭、というものが今年から行われることになった」
「教会の慈善の場、農耕関係者への労い、祭りが増えればそこに金が動く」
「外部からの観光客が来るようになれば、さらに上乗せ」
「新しい領主は、本当に抜け目のないやり手だよ」
「四日後だが、時間があるならば見ていくといい」
シャアリィとアイシャは互いの意志を確認して、
「ええ、急ぐ旅路ではなくなったので、是非!」
夏祭りに続いて秋も祭り。
それもシャアリィが故郷のように思うレリットランスで。
「ファイヤー亭は、露店出すのかな?」
「ていうか、私達で露店やればよくない?」
シャアリィの思い付きは、アイシャを何時も楽しませる。
「でも、シャアリィ、そうすると私達が露店廻り出来なくなるよ?」
そこまで考えていなかった、という顔をして、シャアリィはあっさり廃案を決めた。
「ファイヤー亭の手伝いくらいにしときますか」
「そうすれば、アレックスやオルチェも露店廻りくらい出来るだろうし」
「ナッチェもエレナも、休憩時間を増やせる」
じゃあ、エプロンくらい買いに行こう、と。
冒険者ギルドを出て、職人街へと歩き出した。




