踏破者の再会
秋の陽は釣る瓶落とし。
陽が傾くとあっと言う間に落日し、酒場が込み合う時間がやってくる。
ファイヤー亭で待ち受けていた、シャアリィとアイシャの前に、見慣れない紳士が座る。
「済まない、交代の者が少々遅れてな」
「ちょっと遅くなった、待ったか?」
と、紳士があのぶっきらぼうな口調で喋るのだから、二人は笑いを堪えきれない。
「えっと、私達が待ち合わせしているのはエドワードさん、なのですが」
シャアリィが悪戯をふっかけると、
「無精髭剃って、髪を少々弄っただけだろ・・・あと、服装か」
「一応、院長だから、面倒でも仕方ないんだよ」
と、エドワードが本音を暴露する。
運ばれてきた麦酒の木製ジョッキをぶつけ合い、宴が始まる。
「ただいま、元気にしてたみたいだね?」
「治癒院すごいじゃないか、何から何まで、さすがに驚いたよ」
アイシャが、追加でもう一度、木製ジョッキをエドワードのジョッキにぶつける。
「まぁな・・・最初はちっせえのをやるつもりだったんだ」
「でも、治癒院のあれこれを知るうちに我慢ならなくなって、こういうことになった」
「折角俺に預けてくれた踏破年金、ここのみんなに使うはずだった金、悪いな」
エドワードの謝罪に、アイシャが応じる。
「何を言ってるんだ、最高の使い方じゃないか」
「私達を出し抜いて、街一番の功労者の座に座った気分はどうだ?」
神妙な顔で、エドワードは答える。
「まださ、これが十年やれて、そん時、多分、実感出来る」
「領主にも、ギルドにも、借りっ放しのうちは、俺の成果じゃない」
ふと、エドワードの視線の先を見る。
そこにはエレナがいた。
「エドワードはどんな気持ち?エレナのこと」
シャアリィがエレナに聞こえないように、小声で囁く。
「もう少し酔いが回ってからな・・・」
「それより先に、おかえり、シャアリィ、アイシャ・・・」
「また、見ないうちに美人になったんじゃないか」
アイシャは鼻高々に、返事する。
「私は兎も角として、シャアリィは薄化粧をするともっと美人になるよ」
「旅の話は一日やそこらでは、とても語り切れないが」
「私達は、この夏の旅でかなり成長したんだ」
「残念ながらフローズン・ドラゴンには、まだ届かないけどね」
シャアリィは、エドワードにまた悪戯を仕掛ける。
「ほら、周囲を見渡してごらんよ、皆が羨望の眼差しをエドワードに向けている」
「院長先生、隅におけねえなぁって、明日、治癒院で言われるかもよ?」
以前ならどぎまぎしていたエドワードだが、
「お前ら、自分達がどれだけ有名人か、わかってないだろう?」
「まぁ、俺はおまけだが、俺たちは迷宮踏破者だ」
「一緒に飲むくらい、当たり前さ」
それにしても、だ。
こうして治癒師然りとしていれば、本当に頼り甲斐のある男に見える。
エレナが惚れてしまうのも、仕方のないことだろう。
シャアリィは、そんなことを考えていた。




