義姉妹
竜を倒すのではなく、捕まえる?
自分たちが血眼、血塗れでまだ追い付けないフローズン・ドラゴン。
それを犬か、猫か、拾うかのように言い放った少女をシャアリィは・・・
「私とあなたが戦ったら、どうなる、と、思う?」
物騒な問いを必死の形相でリーシャに投げ掛ける。
その質問の意図がわからないままにリーシャは、
「私と戦う?何故?あなたは姉様の何なの?」
「その質問の意図がわからない」
「自分の身の程を知りなさい」
「敢えて答えてあげるならば、戦いとは力量がある程度釣り合う時に使う言葉よ?」
「私とあなたでは、戦いにすらならない」
わかっていた。
自分が今、この少女に怯えていることも。
最早、この少女がヒトの領域に存在していないことも。
アイシャが慌てて制止する。
「二人とも、穏便に、ね」
「リーシャ、シャアリィは私の想い人だ」
「シャアリィは私が守る」
「当然のように消し飛ぶだろうが、それでも、私達は離れはしない」
「それは覚えておいてくれ」
リーシャは事も無げに首肯する。
「理解しました」
「姉上がもう一人、増えるということですね」
「大変なご無礼を・・・」
「お詫び申し上げます、琥珀の姉上」
シャアリィは顔を引き攣らせたまま、返答する。
「こちらこそ、つまらぬ物言いをしてごめんなさい」
「でも、何時か、届く時が来たならば」
「義姉の戯れに付き合ってもらうからね?」
リーシャは、口角をそれほど吊り上げもせず、
「姉妹喧嘩は嫌いではありません」
「白銀の姉様とも、よく喧嘩しましたからね」
「姉様も、あの頃の弱い私ではありませんので、お忘れなきよう」
アイシャは勿論だと返し、
「でもね、きみがどんなに強くなろうと、私の妹であることも忘れないでくれ」
「もし、きみに助けが必要な時には、私達を頼るんだよ」
「それと、私達はこれから、南部大周回の旅に出る」
「ロザリーへの感謝は手紙になってしまうから、もし、リーシャがロザリーと会うことがあれば、私達が感謝していたと伝えてくれると嬉しい」
リーシャが、その可憐な掌を二回打ち鳴らす。
先ほどの修道士と付き人が、青い顔で部屋に戻ってきた。
「話は済んだ」
「お前たちには気苦労を掛けたが、教会に背くような密談ではなかったと誓おう」
「で、ショットは何処だ?」
「あいつがいなければ妾は散歩も満足に出来ぬというのに」
枢機卿と対面する心の準備など出来ていないシャアリィとアイシャは、
「長居は無用だね」
「ほんの僅かな時間だったけれど、話せて良かったよ」
「リーシャ、くれぐれも自分を労わることも忘れずに」
「きみは、頑張り屋だから、何時も無理をしがちだ」
「おっと、何時までも姉気取りではいけないね」
リーシャは小さく、くすっと笑い。
「お会い出来て良かったのは、こちらこそ」
「姉様も、シャアリィさんも、アーシアンに来たら、又」
「その時は、ちゃんとショットも呼んで、市井のお店でお茶会をしましょう」
シャアリィはやっと人心地。
今は何よりアイスクリームが食べたいと、思っていた。




