真実
シャアリィはリーシャに経験したことのない圧力を感じている。
此処には愛用のワンドも、ダガーを刺したベルトホルスターもない。
脇の下に嫌な汗が流れる。
緊張のあまり暴発しそうだ・・・と。
アイシャは、此処にきた顛末を正直にリーシャに語った。
そしてポケットに入れていた髪飾りをリーシャに返す。
「ロザリーから預かったものだよ」
「コレを返さなきゃね」
リーシャは、それが合図であったかのように、俯いて話し始めた。
「あの日、あそこに姉様がいたのは、私にとっては事故だった・・・」
「私は、地下七階層に竜を捕らえるために一人で潜っていた」
「私にはサモン・ドラゴンというスキルがあるんだけど、肝心な竜がいないから欲しいと思っていたの」
「それをショットに話したら、冒険者を雇って、私の前に竜を連れてくる手配をしてくれた」
「でも、ショットが雇った冒険者は竜を別の事に使ってしまった」
「・・・マッカーシー・パーティの襲撃」
やはり・・・か。
と、アイシャは拳を握る。
リーシャは出来事の続きを語った。
「私の存在は、教会は、まだ表に出せない」
「だから、この悪意の襲撃も表沙汰に出来なかった」
「でも、生き延びた姉様に伝えなければならなかった」
「ショットの許可なしでは教会の外に出られない私は、たまたま、中央大教会に来ていた司教の中から冒険者として名高いロザリー・イグシエンヌを選んだ」
「例え、どれ程の時間が掛かっても、二人が邂逅し、姉様が私の元に訪れてくれることを信じて」
「この髪飾りは、たった一つ、姉様と私を繋ぐ絆」
「それを手放すことは断腸の思いだけれど、姉様が味わった痛みを思えば、躊躇しなかった」
「そして、今日、真実を話すことが叶った」
紅い瞳から不自然な程に綺麗な涙が零れる。
「元凶は、私・・・なの」
「私が竜を捕らえたいとショットに言わなければ、こうはならなかった」
「姉様が大切な仲間を失うことにはならなかった」
全ての線が繋がった。
短い沈黙を破って、アイシャはリーシャの髪を撫でる。
「私は、姉だからな」
「妹を守るのは姉の役目だし、叱るのも姉の役目だ」
「でも、リーシャは何も悪いことはしていないよ」
「ドラゴンを捕まえるって、とんでもない話だけれどさ」
「マーシー達は、本当にいい奴ばかりだった」
「でも、冒険者なら、こういう最後だってあるさ」
アイシャはそこで話を区切ってシャアリィに視線を向けた。
「ここにいるシャアリィ・スノウも、フローズン・ドラゴンの被害者だ」
「リーシャが欲しがっている竜、それは私たちの獲物になった」
「もし、マッカーシー・パーティや、シャアリィに詫びる気持ちがあるならば、今後、あの竜に手出しすることは私が許さない」
「いいね?」
リーシャは涙声で返事をする。
「わかりました姉様、シャアリィさん」
「あの竜は、お二人に差し上げます」
「二度とアレに手を出さないと誓います」
それに・・・と、アイシャは続ける。
「その時の下手人の情報も必要ない」
「私達が再びアーシアンに潜る時、奴らは絶対に仕掛けてくるさ」
「奴らが神に召されるのは、その時でいい」
「奴らも私たちの獲物だ」
そう語るアイシャの目は、やはり姉の目をしていた。




