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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
242/395

教会のネクロマンサー

その少女はモノクローム。

美しく手入れの行き届いた長い銀髪を靡かせる。

人形のような白い肌、細く、長い手、指先。

聖衣とは真逆の喪服のような黒い装束は髪と同じ銀色の刺繍が施され、その意匠は逆十字。

ただ、その瞳だけは、血の雫を零したように紅い。

完全な容姿に欠けたところがあるとすれば、鈍い光を放つ鋼の融合義足。


かつて、天才の名を欲しい侭にしながらも、挑んだ聖印に拒絶され、聖女への階段を踏み外した彼女の名は、『受難の聖女、リーシャ・セロニアス・アビス』。

大教会教皇に『混沌(アビス)』の称号を与えられし、中央大教会枢機卿ショット・ワイズリート直下の死霊術師。


速読を極め、その頭脳に中央教会図書の半数を記憶し、短縮詠唱を超える技能、圧縮詠唱を使う彼女は、その存在を秘匿されてきた。


来るべき吸血種貴族との『決戦兵器』。

彼女を手駒に持つワイズリートにしてみれば、西方、北方の権威争いなど眼中にない。

そして、彼女の存在は間もなく連合国教会の全てを震撼させるだろう。


・・・


アイシャにしてみれば、妹との再会は八年ぶりとなる。

セロニアスが外界に出されれば、その行き先も役割も、その人生さえも様々。

ただ一つ言えることは、外界に出されたセロニアスは、二級品の烙印を押された食み出し者。


『本物』のセロニアスが、イルオールドから足を踏み出すのは戦場のみ。


アイシャのように若くして枷も縛りもない人生を送れる者は滅多にいない。

貴族専属の護衛、或いは大店の用心棒が大半であり、契約満了までその身に自由はない。

契約満了を待たず蓄電した者は、セロニアスの名を奪われる。

それは即ち、一介の獣人として残りの人生を暮らすことに他ならない。


アイシャの活躍は、既に教会関係者にも届いていた。

二つの名有りを葬り、迷宮を踏破したセロニアスとして。


そのアイシャが妹に会うために来訪したのだから、教会としても鼻が高い。

来賓室で待たされること半刻。

武装こそ全て預けることになったが、それ以外に条件はない。

会えなかったり、難癖をつけられるのではないかと思っていただけに、アイシャは少々、拍子抜けした。

それも、シャアリィを伴って面会することを許されたのだから、拍子抜けを通りこして驚嘆である。


「アイシャ殿、妹君をお連れしました」


扉の向こうから聞こえた案内役の声に、開く扉をシャアリィもアイシャも凝視する。

そこに現れたのは、二名の付き人を伴ったリーシャ。


「姉上様、お久しぶりでございます」

「その勇猛、活躍、私の元にも届いておりますよ」

「随分と研鑽なされたようで、お見事にございます」


そう美辞麗句を並べる『妹』にシャアリィは戦慄する。

黒い薄布のベールの向こう、爛々と妖しく輝く紅い瞳。

あのフローズン・ドラゴンをも凌駕する、圧倒的な邪悪の気配!


(これが・・・アイシャの妹・・・)


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