割烹
夏の間、肉ばかり食べていたアイシャの口は、そろそろ、魚が欲しくなる。
アーシアンの繁華街は、さすが首都。
あらゆる地方の料理が揃い、シャアリィを絶句させたジビエも勿論ある。
「かっぽう?」
高級料理店が連なる通り、シャアリィが見つけたのは奇妙な発音の料理。
アイシャは過去に、一度だけ、その料理を食べたことがある。
マッカーシー・パーティに加入して間もない頃、偶然に見つけた希少な魔物を討伐し、泡銭がパーティの懐を温めた日のことだ。
「カウンターを挟んで、料理人が注文した料理を対面で作ってくれる高級店だよ」
「特に魚料理が美味しいんだけれど、勿論、肉もあるよ」
店に入るひとの身成は、成程、お高いんだろうなぁ、と思わせるに十分。
「私達、お洒落してないけれど、大丈夫?」
と、シャアリィがアイシャに問えば、アイシャは笑って答える。
「大丈夫さ」
「此処は冒険者の街でもある」
「運よく泡銭を手にした冒険者を断ってたら商売にならないよ」
「それに、最近は皆、ナセルバ、ナセルバだろう?」
「値段は、まぁ、庶民的とは言えないが、話の種にはいいんじゃないかな?」
そういうことならば、と、シャアリィも納得した。
アイシャは上品に扉を開け、
「女性二名ですが、席はありますか?」
と、店主に問う。
まるで戦場のような掛け声で、威勢よく店主が応じる。
「あいよう!姫君おふたりぃ!今日は刺身、いいのあるよ!」
「席は、左のカウンターでいいかい?」
アイシャが、そこで問題ない、と、簡潔に返事する。
まるで息のあったパーティ・プレイのような遣り取りにシャアリィは笑顔になる。
「刺身って、生のお魚?」
「私、初めて食べるんだけど!」
アイシャは、ふふん、と自慢げに、
「美味しい魚は、生が一番さ!」
「氷結の魔石でキンキンに冷やしたまま、グリーン・ノウズから運ばれてくるんだ」
「気に入ったら癖になるよ」
「シャアリィが食べれそうなものを選ぶから安心して!」
そこから先、アイシャと店主の遣り取りがシャアリィには舞台を見るよりも面白かった。
アイシャの攻撃。
「刺身の盛り合わせ、それと貝の酒蒸し、お酒はワインの白をボトルで!」
店主の防御と反撃。
「あいよォ、今日はなんとウナギがあるぜ、どうする?」
アイシャにクリティカル・ヒット!
「勿論、頂く!」
「とりあえずは、そこまでで・・・」
シャアリィは思わず喝采する。
そして料理提供までの圧倒的な速さを目にし、言葉を失う。
「私より器用に刃物使うひと、初めて見た!」
「店主さん、凄い!」
ご満悦の二人だった。




