首都近郊
一日滞在を伸ばしたナセルバで二人が堪能したものは、値段の割に冴えないディナーくらいだった。
どうやら、アイシャとシャアリィはナセルバの街とは相性が悪いらしい。
誰にも会わない孤独より、雑多な人混みの中でさえ見知った顔がいない孤独のほうが、絶望感を感じるように。
ナセルバの街は、シャアリィとアイシャを拒絶する。
悪いことばかりではない。
軋むベッドの上には、今、想い人が一緒にいて、他に耳目を奪われない時間がある。
時折、戯れ、甘味を口にするだけで、その時間もあっと言う間に溶けてしまう。
それでも、これこそが幸せなのだ、と、二人はもう知っている。
ナセルバとアーシアンを結ぶキャラバンは、何時もごった返す。
この二つの街が今の連合国の首都であり、物流が最も活発になるのは当然のことだ。
大きな利益を目指すならば、遠くの産地で安く仕入れ、ナセルバで売り捌くのが一番利益が出るだろうが、多少割高なアーシアンで仕入れ、ナセルバで売り捌いたとしても、そこそこの利益が確保出来る。
移動や輸送のコスト、リスクを考えれば、アーシアン、ナセルバ間が最も手堅く稼げるルートで間違いはない。
地方に出没するような盗賊の類は、このルートでは絶滅危惧種だ。
「もうすぐアーシアンだけど、アーシアンでやることはある?」
シャアリィがアイシャに尋ねる。
それが意味することは、マッカーシー・パーティの墓参りをどうするか、ということだ。
今回の分解危機の発端でもある。
多分、アイシャは、特にやるべきことはないよ、と、答えるだろう。
そして、予想通りの言葉が返ってきた。
「乗り合わせの時刻次第だね」
「やるべきことは特にない」
シャアリィは、少し不満だ。
それは、アイシャ・パーティに参加し、自分もパーティと言うものを理解し始めていたからに他ならない。
「やっぱり、お墓参り行こうよ」
「それこそ、今回は大周回で早々には戻れないんだから、さ」
シャアリィは、少し考えて・・・
「私は宿で待っているから、アイシャだけでも行ってくれば?」
「勿論、一緒に行きたいなら付き合うよ?」
アイシャは首を縦に振る。
「そうだね・・・行くなら一緒だ」
「今回は、お花、シャアリィに選んでもらおうかな」
シャアリィは任せて、と意気込み、アイシャはその頭を撫でる。
乗り合わせた乗客の誰かの咳払いで、二人は我に返る。
姉妹にも見えず、友達にしては親し過ぎる少女達が異質なのだろう。
もう、何度も繰り返されてきたことだけれど、呆れてしまう。
迷惑を掛けたのならば謝らなくてはならないのだろうけれど、ほんの少し会話を交わしただけで、騒いだわけでもない。
シャアリィは、鞄からチョコレートの包みを取り出し、アイシャに目配せする。
そして、包みを剥がして、アイシャの口に入れる。
「ふふ」っとアイシャが微笑む。
それは、シャアリィの無言の挑発。
挑発に乗れば、残念なことに思い知らされる羽目になる。
アイシャの膝の間にある、鵺斬。
それに気付いたならば、もう、咳払いをするべきではない。
勿論、シャアリィにしてみれば、ただの悪ふざけなのだが。
アーシアンは、もう目の前。




