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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
237/396

首都近郊

一日滞在を伸ばしたナセルバで二人が堪能したものは、値段の割に冴えないディナーくらいだった。

どうやら、アイシャとシャアリィはナセルバの街とは相性が悪いらしい。

誰にも会わない孤独より、雑多な人混みの中でさえ見知った顔がいない孤独のほうが、絶望感を感じるように。

ナセルバの街は、シャアリィとアイシャを拒絶する。


悪いことばかりではない。

軋むベッドの上には、今、想い人が一緒にいて、他に耳目を奪われない時間がある。

時折、戯れ、甘味を口にするだけで、その時間もあっと言う間に溶けてしまう。

それでも、これこそが幸せなのだ、と、二人はもう知っている。


ナセルバとアーシアンを結ぶキャラバンは、何時もごった返す。

この二つの街が今の連合国の首都であり、物流が最も活発になるのは当然のことだ。

大きな利益を目指すならば、遠くの産地で安く仕入れ、ナセルバで売り捌くのが一番利益が出るだろうが、多少割高なアーシアンで仕入れ、ナセルバで売り捌いたとしても、そこそこの利益が確保出来る。

移動や輸送のコスト、リスクを考えれば、アーシアン、ナセルバ間が最も手堅く稼げるルートで間違いはない。

地方に出没するような盗賊の類は、このルートでは絶滅危惧種だ。


「もうすぐアーシアンだけど、アーシアンでやることはある?」


シャアリィがアイシャに尋ねる。

それが意味することは、マッカーシー・パーティの墓参りをどうするか、ということだ。

今回の分解危機の発端でもある。

多分、アイシャは、特にやるべきことはないよ、と、答えるだろう。


そして、予想通りの言葉が返ってきた。


「乗り合わせの時刻次第だね」

「やるべきことは特にない」


シャアリィは、少し不満だ。

それは、アイシャ・パーティに参加し、自分もパーティと言うものを理解し始めていたからに他ならない。


「やっぱり、お墓参り行こうよ」

「それこそ、今回は大周回で早々には戻れないんだから、さ」


シャアリィは、少し考えて・・・


「私は宿で待っているから、アイシャだけでも行ってくれば?」

「勿論、一緒に行きたいなら付き合うよ?」


アイシャは首を縦に振る。


「そうだね・・・行くなら一緒だ」

「今回は、お花、シャアリィに選んでもらおうかな」


シャアリィは任せて、と意気込み、アイシャはその頭を撫でる。

乗り合わせた乗客の誰かの咳払いで、二人は我に返る。


姉妹にも見えず、友達にしては親し過ぎる少女達が異質なのだろう。

もう、何度も繰り返されてきたことだけれど、呆れてしまう。

迷惑を掛けたのならば謝らなくてはならないのだろうけれど、ほんの少し会話を交わしただけで、騒いだわけでもない。


シャアリィは、鞄からチョコレートの包みを取り出し、アイシャに目配せする。

そして、包みを剥がして、アイシャの口に入れる。


「ふふ」っとアイシャが微笑む。


それは、シャアリィの無言の挑発。

挑発に乗れば、残念なことに思い知らされる羽目になる。

アイシャの膝の間にある、鵺斬。

それに気付いたならば、もう、咳払いをするべきではない。

勿論、シャアリィにしてみれば、ただの悪ふざけなのだが。


アーシアンは、もう目の前。


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