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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
232/410

百錬のイザベラ

討ち取った。

そう思った矢先、イザベラの身体が黄金のオーラに包まれる。


それはリバイバル、起死回生、超常の回復スキル!

敵の持っていた武具を手に、戦乙女(ヴァルキリー)が立ち上がる。


「ふふっ」

「なかなかにしっくりくるじゃあないか」


「ブラント・マスタリー」:鈍器攻撃補正

「マッスル・アップ」:筋力向上

「ウィンド・ウォーク」:移動速度向上

「ヘル・フォーカス」:致命率向上

「サモン・ピクシー」:妖精召喚

「ブリード・エフェクト」:出血付与

「アグレッシブ・スタンス」:防御力減少、攻撃力上昇

「フォートレス」:痛覚遮断

「ヘイスト」:攻撃速度向上


髪留めは外れ、鎧は砂に塗れても、その瞳の殺意に翳りはない。

エンチャンターですら習得の難しい補助術式の乱れ咲き。


百錬の名に偽りなし!

屠るべき敵は、傲慢にして苛烈な殺戮者、ロザリー・イグシエンヌ!

最早、その命運はこの手に!


イザベラから放たれた青い肌、赤い目の妖精が、死の詩を謡う。

それはロザリーの聴覚を阻害し、僅かながら平行感覚を奪う。

そして疾走から放たれる小メイスは、ヘイストの加速と出血付与。

擦過傷さえもが出血を伴う威力は、鈍器の形をした剣。


ロザリーがイザベラに勝つ為には、被弾を免れることが前提となり、それは即ち、メイスを放棄したまま徒手空拳で、戦う以外にない。

枷をつけたままで遣り合うには、イザベラは危険過ぎる。


互いに歩を進め、向かいあい、視線が交錯し、インファイトが始まった。

致命の一撃を避け、己の一撃を叩き込む、それが全ての獣じみた殴り合い。

鈍器を持つイザベラのリーチがロザリーのそれを凌ぎ、鼻先を掠める。

ただ、それだけでざっくりと真一文字に傷が開く。

ロザリーもやられてばかりではない。

ロザリーは長い脚を生かし、足払いから、踵落としに至るまで、様々な蹴りを繰り出す。

北方大教会仕込みの体術は、修道女を殺戮者へと変貌させたのだ。


致命に至らない傷が次々に二人の身体に刻まれてゆく。

死線の上を綱渡りする二人の運命を分けたのは『痛覚遮断』。

まるでゾンビィのように殴られても、蹴られても、イザベラに苦悶は見えないが、イザベラのスマッシュ・ヒットを受ければ、ロザリーは気力で耐えなければならない。


ついにロザリーの心が折られ、その五体を地に投げ出した。

もう、何も遣り残しも、言い残しも、ない。


イザベラは一人、天を仰ぎ、亡き夫への鎮魂を捧げる。


「アラン、私は騎士になったんだ」

「これ程の兵を討てる程に強くなったんだ」

「でもね・・・私は、やはり・・・友を殺せない」

「これで許してくれないか」


まるで荘厳な絵画のように、雨は止み、灰色の雲の隙間から日差しが照らす。


「神よ・・・私は、許されても良いのでしょうか」

「まだ、生きても良いのでしょうか」


ロザリーの問いに答えたのは、神ではなくイザベラだった。


「いいよ・・・いいに決まってるじゃあないか」

「さぁ、これで私達は紛れもなく友となった」

「ロザリー、心から感謝するよ」


イザベラの無骨なガントレットが、ロザリーの細い指と絡み、彼女達の決闘は終わりを告げた。


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