最後の宴
宴の最中、もう、この話は避けられぬと二人は視線を交わす。
「ロザリー、きみが日時と場所を決めるといい」
「私は決闘を仕掛けた側だ」
「貴族の流儀に乗っ取れば、公平な立ち合い人も必要だが、私達の場合は勝ち負けという判定を競うものではないからね」
「私達には、観客すら不要」
イザベラはデートの日時でも決めるかのように、あっさりとした口調だ。
「では、明後日の正午、場所は街外れのコロシアム跡を希望するよ」
「明日一日で、しがらみと遣り残したことを清算し、晴れ晴れとした気持ちで迎え撃ちたい」
「互いに武具の手入れも必要だろう」
「最も公平な日取り、と、思うね」
シャアリィは思う。
理解出来ないと。
蟠りは、殲滅戦の中で昇華し、まるで自分とアイシャのように、その仲を深めるだけと思っていた二人が命を懸けて戦うなんて。
しかし、それに口を挟めないことだけは・・・わかってしまっていた。
アイシャも、また、わかったフリをするしかなかった。
あの落胆の日に出会ってから、三人で過ごした日々で自分がどれ程の成長を遂げたことか。
まだまだ自分の先を行く二人に、何度、思い知らされたことか。
緊張感の張り詰めた即席パーティから、本物のパーティになったというのに。
明後日には殺し合う、そう決めたイザベラとロザリーの間には不穏な雰囲気はない。
まるで、わかりあった親友のように盃を傾け、合わせる。
「繰り返しになるが、私はきみを恨んではいない」
「そして、どのような結果になろうとも、きみを恨むことはない」
「きみが私の良き友であることは変わりないさ」
イザベラは優しい笑みでロザリーを見つめる。
「わかっているよ」
「罪に対してならば決闘ではなく粛清という言葉を選ぶのだから」
「私は間違っていた」
「懺悔も許されぬ程に」
「この咎人を良き友だと言って貰えるだけで、どれ程の幸せか」
そして、二人は闘志を露わにする。
「神に仕える身であらば、私の行いすらも神は許容する」
「正義の騎士たる貴方の刃、私のメイスでへし折って差し上げましょう」
「そして、貴方の魂を神の御許に召すことが、この鏖殺のロザリーの誠意!」
ロザリーの啖呵を正面から受け、イザベラも又謳う。
「騎士の誇りを汚した者は誰であろうと容赦はしない」
「この戦場無き平穏の世で、それさえ放棄したとあれば、何が騎士、何が貴族」
「大儀の全てが神ならば、誰が人を救うと言うのか!」
イザベラの刃は救済のために振るわれる。
ロザリーの罪を許すためには、これ以外の方法はない。
それをロザリーは十分に理解した上で、死力を尽くすこともイザベラに対する誠意。
多分、それは理屈だ。
ひとは何処までも傲慢で、己の正義を証明しなければ気が済まないだけなのだ。
逆鱗の邂逅から八年を経て、ついに、殺し合う時が来た。
それだけなのだ。




